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ハードルアーと言う劇薬【その3】

公開日:
連載:加来 匠レオン「ライトゲームマニア」
文:レオン 加来 匠
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メタルジグ編

前回は「ハードルアーと言う劇薬」のプラグ編として、僕のメバルプラッギングについて書いたが、今回のテーマはメタルジグだ。

1970年代に渓流スプーンから始まった僕のルアーフィッシングも、さまざまな釣りを経験し、やがてメバルやアジを小型ジグヘッド+ワームで狙うライトゲームへどっぷり浸かっていくことになる。そして1990年代に入って、僕はもう一度「金属のルアー」に夢中になる。ただし、今度はスプーンではない。ハマったルアーは“メタルジグ”だ。

当初は朝方、本流で発生するアジやメバルのナブラを撃つために使っていた。スプーンでは強い潮流に持っていかれるため、同じウエイトなら細身で潮を切りやすいジグの方が明らかに有利だったからだ。

ただし、夜になるとどうにも反応が悪い。だから僕の中では長いこと、メタルジグは「デイゲームでナブラを撃つためのルアー」という引き出しに収まっていた。ところが2000年代に入って、その引き出しをひっくり返されることになる。

メタルジグを「超微速」で使うという衝撃

きっかけの一つは2002年頃。釣友のマッキーとの釣行で、浮き桟橋からバーチカルにメタルジグを落として釣る「桟橋ジギング」を見せられた時だった。

この釣りが、僕の知っているメタルジグの常識とはまるで違った。浮き桟橋のヘリから、潮が通る真下へジグを落とし、一旦ボトムを取る。そこからが驚きだった。速く巻くでもない。激しくしゃくるでもない。むしろ真逆。超がつくほどスローなのだ。ハンドル一回転に8秒ほどかける超微速で巻き上げ、一回転させたところで巻く手を止め、チョンと軽くしゃくって待つ。すると、それまでワームリグではまったく無反応だったポイントで、いきなり25cmを超える良型メバルが食ってきた。しかも一匹ではない。そこから一投一匹で連発させる……。

感動した。それまでの僕にとってメタルジグとは、巻くか、しゃくるかして初めて命が入るものだった。それをマッキーは、まるで鉛の棒を水中へ置いてくるような速度で操って魚を連発させた。

速く動かすためのものだと思っていた道具を、極端に遅く使う。これは目から鱗だった。同時に、僕の中でメタルジグというルアーを覆っていた殻に、最初の大きなヒビが入った瞬間でもあった。

激流ボトムで、ジグを流す

そして2007年。忘れられない釣りがある。場所は広島県安芸郡の豊島。海を見れば、あちらこちらでメバルがライズしている。もう360度ライズと言っていいくらい。普通なら嬉しい状況なのだけれど、これがなかなか思ったようにいかない。トップを投げる。ミノーを投げる。ジグヘッドワームも投げる。釣れるには釣れる。しかしヒットしてくるのは15cm〜18cm。20cmに満たない個体ばかりだ。

となれば、次に目を向けるのはボトムだ。海へ突き出した堤防のL字部分へ少し移動する。ここは潮がガンガン流れる場所。そこでJAZZの爆釣ジグ5gを、どアップへ投げる。アップクロスではない。あくまで、どアップだ。川で言うなら、流れの中へ立ち込んで真正面の川上へキャストするイメージだ。堤防のL字部分だからこそ可能なやり方ではあるが、これなら強い流れの中でもジグにボトムへ到達するための時間を与えられる。

まず着底させる。チョン、と軽くロッドをあおってジグを持ち上げる。当然ジグは潮に押されて下流側へ運ばれる。しかし5gあれば、この流速でも再着底させられる。しゃくっては落とす。またしゃくっては落とす。ただし、ジグそのものに派手なアクションを与えたいわけではない。主役はあくまで潮だ。僕がやっているのは、ジグをボトムから少しだけ剥がし、あとは潮に一歩ずつ運ばせていくような釣りだった。

すると、ゴンッ。明確なバイトを伝えて上がってきたのは、25cmを楽に超える大型のメバルだった。

そこから同じ釣り方で20cmアップが次々と食ってくる。確か3時間ほど、かなり夢中になってやった記憶がある。もちろん、たくさん釣れたことは嬉しかった。でも、それ以上に僕を興奮させたのは、自分なりに立てた読みとメソッドがハマり、想像以上の結果になったことだった。メタルジグを激しくしゃくって食わせたわけではない。速く巻いたわけでもない。流れの上流側へ投じ、沈め、ボトム付近を潮に運ばせる。

つまり僕は、メタルジグを使って「流す釣り」をしていた。後日ブログにも、新しいメソッドを見つけた興奮が冷めない、という趣旨のことを書いている。いや、本当にそうだったんだ。釣果そのものより、自分の中に無かった扉が一枚開いたことの方が嬉しかった。

これがハードルアーの怖いところでもあり、面白いところでもある。たった一匹の魚が、それまで頭の中に描いていた釣り場の地図へ、突然一本の新しい道を書き加えてしまう。それまで行き止まりだと思っていた場所の、その先へ行けるようになる。劇薬なのだ。

状況やタイミングを選ばないジグを作りたい

さて。ここから時間を一気に進める。言わずと知れた【ナッゾジグ】の話だ。

1970年代にスプーンやスピナーという金属製ルアーに出会ってから早50年。その間にはいろいろな出会いがあり、発見があり、もちろん紆余曲折も山ほどあった。そして僕なりにメタルルアーと付き合い続けた末、一つの形として辿り着いたのがナッゾジグだ。

メタルジグには弱点がある。その一つが、根掛かりしやすいこと。これは僕にとってかなり大きな問題だった。なにしろ僕の大好きなターゲットは根魚である。だから根が荒ければ荒いほど嬉しい(笑)ところが魚が居そうな岩礁帯へメタルジグを入れれば入れるほど、当然スタックの危険性は高くなる。魚に近づこうとすればするほど、ルアーを失う危険にも近づいてしまう。なんとも悩ましい。

もう一つは、初心者にとって少々ハードルが高いことだった。オフショアなら大きくロッドをしゃくってジャークし、巻き上げてくる釣りでも成立する。しかし港湾部のライトゲームでは、そう単純ではない。大きなジャークでは小型魚が追い切れない場面も多く、ショートジャークをはじめとした細かな操作が必要になる。

だったら、根掛かりしにくく、難しい操作をしなくても、普通に投げて巻くだけで魚を連れてきてくれるメタルジグは作れないものか。そこから試行錯誤が始まった。サンプルを作ってはボツ。また作ってはボツ。そんなことを繰り返して、気がつけば10年ほど経っていた。そしてある日、ふと閃いた。

「あれが使えるじゃないか」

僕自身が手掛けたルアーの中に、ブレードジグの走りとなったメタルマルがある。テールにスイベルとコロラドブレードを装着し、ブレードの中へフックを仕込んで、「フックごとクルクル回す」という、今考えてもなかなかの変態ジグだ。

しかしこの構造は非常によく釣れ、「魚種限定解除」と呼ばれるほど多種多様な魚を連れてきた。

このブレードの存在を、新しいジグの心臓部にできないか。そこから一気に形が見え始めた。

まずボディ。弱い入力でもしっかり動くようにヘッド側へボリュームを持たせ、テールを絞った。さらにアシンメトリーを強め、ボディに明確な上下を持たせる。これによってリトリーブ中にボディがひっくり返りにくくなる。そして、要となるブレードだ。メタルマルではベアリングスイベルを介してブレードを回転させた。いわばスピナー的な発想である。

ならば今度は、回さない。

スイベルは使わず、スプリットリング直付けでブレードを左右へ振らせる。上下の姿勢が安定したボディに、テール側で左右へ振れるブレード。さらにその上へフックをセットすることで、フックポイントを障害物から守り、大きなスタック回避能力を持たせることができた。そして泳がせてみる。

クネ、クネ、クネ……。

金属の塊だったはずのものが、まるでジョイントミノーのように身をくねらせて泳いでくる。しかも使い方は難しくない。ジグヘッドリグのような感覚で投げて、沈めて、巻けばいい。メタルジグの身体を持ちながら、メタルジグの作法に縛られないジグ。ようやくナッゾジグが生まれた。

50年経っても、まだ金属片に驚かされる

考えてみれば不思議なものだ。僕のルアーフィッシングは1970年代、スプーンという一枚の金属片から始まった。

1990年代には、細身でよく飛び、速く沈むメタルジグでナブラを撃った。2000年代に入ると、マッキーから「こんなに遅く使っても釣れる」ということを教えられた。そして豊島では、自分なりに「流して釣る」というメソッドを見つけた。

速く巻く。
しゃくる。
落とす。
ゆっくり巻く。
止める。
流す。

同じ金属の塊なのに、使い手の発想一つでまるで違う顔を見せる。そして散々メタルジグに遊んでもらった僕は、とうとう「もっと根掛かりしにくく、もっと簡単に使えるジグが欲しい」と、自分でナッゾジグまで作ってしまった。

でもね、たぶんこれで「結論」ではないと思っている。釣りに結論なんて、そう簡単には出ない。一つ答えを見つけると、その答えの向こう側に、また次の疑問が見えてくる。50年前、僕はスプーンを見て、「こんな金属片で、本当に魚が釣れるのか?」と思った。そして今も、小さな金属片を手のひらに乗せて、「これ、まだ他に使いようがあるんじゃないか?」なんて考えている。

結局、あの頃からあまり変わっていないのかもしれない。ただ一つ変わったとすれば、50年前にはただ不思議だった金属片が、今では僕にとって未知の釣りへ入っていくための鍵になったことだ。

投げてみなければ、その扉の向こうは分からない。だからまた投げる。そして魚が一匹答えてくれた瞬間、昨日まで無かった釣りが始まる。

ハードルアーと言う劇薬。メタルルアーという薬は、50年経った今でも色褪せず、僕にはかなり効くのである。

出典:YouTube「INX tv」

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