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「ナノソルト」とは何か。ベイティとスワールテールシャッドXGに施す、海中バランスの素材設計

連載:加来 匠レオン「ライトゲームマニア」
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今回は、少しだけ専門的な話をしておこうと思います。

普段、ユーザーの皆さんが目にするのは、完成したワームの形やカラー、そして実際に魚が釣れるかどうかです。しかし、その裏側には、素材、比重、硬さ、伸び、針持ち、吸い込みやすさ、成形時の安定性など、なかなか表には出ない製造過程の細かな調整があります。

今回のお話は、そういう意味では少しこ難しく感じるかもしれません。けれど、インクスレーベルのワームがなぜあの質感なのか、そして今回なぜ“ナノソルト”を採用するのか。そこはぜひ知っておいてほしい部分なので、あえて原稿にしておきます。

レオン 加来 匠(Kaku Takumi) プロフィール

加来匠(かく たくみ) 中国&四国エリアをホームグラウンドとし、メバルやアジ、根魚全般の釣りを得意とする生粋のソルトライトリガー。レオンというのはネットでのハンドルネームとして使い始めたが、いつの間にか、ニックネームとして定着。ワインドダートやSWベイトフィネスなどを世に広めた張本人、新たなスタイルを常に模索中! 「大人の遊びを追求するフィッシングギアを提供する」ことを目的としたプライベートプロダクション「インクスレーベル」代表もつとめる。

欠品カラーと新色から順次ナノソルト配合へ

具体的には、おそらく晩夏から初秋の頃になるかと思いますが、欠品カラーの次回入荷分、そして新色を含む新パッケージ分から、「ベイティ」と「スワールテールシャッドXG」に順次ナノソルトを配合していきます。

ナノソルトというのは、ざっくり言えば“微粒パウダー状の塩”です。こう書くと、まず気になる方もいるでしょう。

「塩を入れると、ワームが脆くなるのでは?」
「比重が変わって、今までの動きと違うものになるのでは?」
「そもそも、なぜ塩を入れる必要があるのか?」

このあたりは、当然出てくる疑問だと思います。

昔からソルト入りワームには、よく釣れるというイメージがある一方で、裂けやすい、針持ちが悪い、素材が弱い、という印象を持っている方も少なくありません。だから「ナノソルトを入れる」と聞いた時に、少し不安になる気持ちもよく分かります。

ただ、今回のナノソルト配合は、単に塩を入れて重くするという話ではありません。 そして、いきなりベイティやスワールテールシャッドXGに施すわけでもありません。インクスでこのナノソルト導入を最初に行ったのは、2024年発売の「テールマッカートニー」でした。

そして続いて、昨年発売した「フェアリーテール」にも採用しています。

フェアリーテールで得た実釣テストの蓄積

フェアリーテールは、いわゆる細身ワームです。つまり、ボリュームのあるテールマッカートニーと違って、ソルト配合がとても難しいタイプのワームでもあります。

ワームに塩を入れるというのは、そもそも口で言うほど簡単ではありません。特に細身ワームは、ボディの体積が小さいので、内部に入るものの影響が非常に出やすい。塩の粒が偏れば、比重も偏る。少し硬い部分ができれば、曲がり方も変わるし、フックを刺す位置や、魚が噛んだ時の裂け方にも影響します。

だからこそ、フェアリーテールでは相当な時間をかけて、バランステストや強度テストを行いました。

そして実釣テストでは、あえて“ソルト入りサンプル”と“ノンソルトサンプル”の両方を作りました。しかも、それをフィールドスタッフには伝えていません。

「これはソルト入りです」「これはノンソルトです」と先に伝えてしまうと、どうしても頭で判断してしまいます。いわゆる「認知バイアス」と呼ばれる厄介な現象です。だから、当初そこは伏せました。

純粋に現場で使った時の肌感覚として、どちらを良いと感じるのか。飛距離、潮なじみ、操作感、吸い込み、釣果、針持ち。そういう部分を、先入観なしで見たかったのです。

結果として、明らかに評価が高かったのは、“ナノソルト入りのサンプル”でした。

そしてもうひとつ重要だったのは、針持ちや耐久性に関する結果です。フェアリーテールのような細身で、そもそもちぎれやすい形状のワームであっても、針持ちそのものはナノソルトの有無だけで決まるわけではありませんでした。むしろ明確になったのは、ワームそのもののシルエットやボリュームに対して、“PVCと可塑剤のバランスの方がずっと重要である”ということです。

たとえばノンソルトサンプルでの実験でも、「針持ち良すぎ」と評されるベイティとまったく同じ素材設定、つまりPVCと可塑剤のバランスでベイティSプロトを作ると、実釣テストスタッフからは「針持ちが悪い」と酷評されました。 重ねて言いますが、全く同じ素材なのに、です。それほど、ワームの形状やボリュームと素材設定の相性はセンシティブなものなのです。

テールマッカートニーで基礎データが得られ、フェアリーテールでは難しい細身ワームでも“成功”と呼べる結果が得られました。だからこそ、次の段階としてベイティとスワールテールシャッドXGにも展開できると判断したわけです。

重量化ではなく、海中バランスの最適化

今回のナノソルト配合で狙っているのは、単純な重量化ではありません。高比重ワームにしたいだけなら、もっと分かりやすく重い方向へ振ればいい。塩に限らず、比重の高い素材を多く入れることもできます。

しかし、それをやってしまうと、ベイティやスワールテールシャッドXGが本来持っている良さから外れてしまいます。

ベイティには、ベイティの軽やかさがあります。

小魚らしいシルエット、強すぎないシャッドテール、巻いても止めても漂わせても破綻しにくい姿勢。そして、アジやメバルが違和感なく吸い込みやすく、咥え心地の良い、ノンリブの肉質ボディ。

スワールテールシャッドXGにも、スワールテールシャッドXGの良さがあります。

テールで水を受け、ただ巻きでも存在感を出しながら、ライトゲームで扱える繊細さを残している。強すぎないけれど弱すぎない、その中間の使いやすさです。

そこを壊してまで重くするなら、それはもう、それぞれのワームでやる意味がありません。では、ナノソルトを入れることで何を狙っているのか。ひと言で言えば、“海の中でのなじみを良くするため”です。

海水の比重は、おおよそ1.02前後です。一般的な軟質PVCワームは、それより少し重い素材です。そこへ顔料、ラメ、ホロ、グロー粉体、グローボール、そして今回のナノソルトのようなものが入ることで、ワーム全体の重さや水中姿勢はほんの少しずつ変わります。

つまり、ナノソルトは「重くして沈めるため」ではなく、海水中での落ち着きや操作感を整えるためのもの、なのです。

・キャストした時に、少し飛びが安定する
・水面で弾かれにくく、潮の中へスッと入る
・巻いた時に、リグ全体の存在感がぼやけにくい
・止めた時の姿勢が落ち着く
・魚が吸い込んだ時に、口の中へ自然に収まりやすい

こういう部分を、ほんの少し整えるという思想のもと、開発したわけです。

PVCと可塑剤で作る“耳たぶ感触”

ここで、ソフトワームの素材そのものの話もしておきます。

ソフトワームの柔らかさや肉質感というのは、PVCそのものだけで決まるものではありません。PVCに対して、どんな可塑剤をどれだけ使うか。そして加熱して融合した後に、どんな質感として仕上がるか。この配合バランスによって、ワームの柔らかさ、張り、戻り、裂けにくさ、針持ちが大きく変わります。これは、インクスのワーム作りではずっと大切にしてきた部分です。

たとえば、スワールテールシャッド。ベイティ。 そしてジュラクロー。これらを使ってくださっている方から、よくこういう声をいただきます。

「耳たぶみたいな感触が最高」
「PVCなのに針持ちがめちゃくちゃいい」

これは、ただ柔らかくしただけでは出せません。柔らかくするだけなら、方法はいくらでもあります。しかし柔らかすぎると、フックを刺した部分がすぐに広がったり、魚が噛んだ時に裂けやすくなったり、ジグヘッドに対してズレやすくなったりします。

逆に、針持ちだけを優先して硬くすれば、魚が吸い込みにくくなる。咥えた時の違和感も出やすくなる。特にアジやメバルのように、吸って吐くまでが速い魚には、この差がそのままバイトの深さに出ます。

つまり大事なのは、柔らかいけれど弱くないこと。吸い込みやすいけれど、フック周りが簡単に崩れないこと。魚が咥えた時に自然で、なおかつ実釣で使い続けられること。

この相反する要素を、PVCと可塑剤の配合でどこに落とし込むか。そこがインクスのソフトベイト作りの肝なのです。

今回のナノソルト配合も、当然その延長線上にあります。塩を入れることで、ベイティやスワールテールシャッドXGの肉質が壊れてしまっては意味がありません。耳たぶ感触が失われたり、吸い込みやすさが落ちたり、針持ちが悪くなったりするなら、それは採用する意味がない。だからこそ、ナノソルトを入れるかどうかだけでなく、PVCと可塑剤のバランス、ワームのシルエット、ボリューム、肉厚、テールの動きまで含めて、全体で見ています。

フェアリーテールのテストで見えてきたのも、まさにここでした。針持ちや耐久性は、ナノソルトの有無だけで単純に決まるものではない。ワームの形状とボリュームに対して、素材の硬軟をどう合わせるか。そこがずっと大切だったのです。

カラーごとの微差とナノソルトの位置づけ

ここで、既存ベイティのギミックに関する話を少し具体的にしておきます。

実はベイティのカラーラインナップの中でも、「堤防ナトリウム」、「月夜ブラック」、「抱卵モエビ」には、スターグローと表記してある「グローボール」が入っています。

そしてこのグローボールは、実は今回のナノソルトよりも明らかに重たい素材なのです。つまり、ベイティには重たいバージョンがカラーラインナップの中にすでに存在していたのです。

そして非常に重要な事実ですが、この3色は、ラインナップの中でも良く釣れる色として人気カラーになっています。出荷量から見ても明らかな傾向です。つまり、同じベイティでも、カラーによって中に入っているものは少しずつ違います。見た目だけではなく、水中でのなじみ方にも、ほんのわずかなカラーごとの個性があるわけです。

これは、普通に使っているだけではなかなか気づきにくい部分だと思います。パッケージを見ただけでは、「このカラーは少し重め」「このカラーは少し軽め」とは分かりませんからね。だから、ナノソルトが入ったからといって、急にベイティが別物になるわけではありません。そもそもワームというものは、色や内包物によって、基本的にわずかな差を持っているものなのですから。

もちろん、何も入っていないプレーンなベイティと比べれば、ナノソルトを配合したベイティは若干重くなります。ただし、それはグラム単位で大きく変わるような話ではありません。たとえば0.01gや0.02gといった、百分の一グラム単位の微差です。

そしてライトゲームでは、この微差を大事にすることもあります。0.4g、0.6g、0.8gといった極軽ジグヘッドを使うゲームでは、細かな違いが感覚に出ることはあります。しかし同時に、そのくらいの差は、ジグヘッドのウエイトやヘッド形状をひとつ変える、フック軸やサイズをひとつ変える、フロロリーダーを少し太くする、あるいは細くする。そういった微調整を普通に行う世界でもあります。

ですから、「ナノソルトが入ったから比重が変わった」と単純に考えるのは、少し違います。

ナノソルトで狙っているのは、ただ数字上の比重を上げることではありません。海水中でのなじみ方を整え、リグ全体の操作感を良くすることが最大の目的です。

比重だけでは決まらない水中姿勢

ワームの水中姿勢というのは、比重だけで決まるものではありません。ボディの形、テールの水受け、素材の張り、ジグヘッドのヘッド形状、フックサイズ、リーダーの太さ、潮の速さ。そういうものが全部合わさって、初めて海の中での動きになります。

ベイティやスワールテールシャッドXGにとって大切なのは、軽すぎず、重すぎず、潮に負けず、沈みすぎないことです。そしてアングラーの手元に、ちゃんと「今どこを泳いでいるか」が伝わること。

たとえば風がある日。軽いジグヘッドを使っていると、ラインが風に取られて、リグがどこにあるのか分かりにくくなることがあります。また、潮が速い場所では、ジグヘッドは流れに同調しても、ワーム本体の方は潮に置いていかれるような感覚が出ることもあります。

そんな時に、ワーム自体が少し海水になじんでくれると、操作感が変わります。手元に戻ってくる情報量が増えます。これは、単純に「重いから沈む」という話ではなく、リグ全体が海の中で落ち着くという感覚に近いです。

そして、吸い込みの自然さも大切です。アジやメバルは、ワームを見つけて、近づいて、咥えて、違和感があればすぐに吐き出します。その一瞬の中で、ワームが硬すぎたり、水中で不自然に弾いたりすると、バイトが浅くなることがあります。

ベイティはノンリブボディによる吸い込みやすさを大切にしてきました。スワールテールシャッドXGも、波動と食わせのバランスが命です。

今回のナノソルト配合でも、そこは絶対に壊したくありませんでした。

微粉ナノソルトを選んだ理由

だから、粗い塩粒ではなく、微粉状のナノソルトを選んでいます。

粗塩入りワームの大きな欠点は、単に裂けやすいことだけではありません。塩が偏って入り、比重にも偏りが出やすいことです。大きなワームなら、多少の偏りはそこまで目立たない場合もあるでしょう。しかしベイティやフェアリーテールのような小さなライトゲームワームでは、この偏りがかなり大きな問題になります。

・ボディの片側だけがわずかに重い
・頭側と尻尾側で比重の出方が違う
・同じカラー、同じサイズのはずなのに、泳ぎや沈み方にばらつきが出る

こういうことが起きると、小魚らしい姿勢や、巻いても止めても破綻しにくいバランスが崩れてしまいます。小さなワームほど、内部に入る粒子の偏りが動きに出やすいのです。

実は、今まで「塩を入れたいけれど、入れられなかった」理由のひとつが、まさにここにありました。塩そのものが悪いのではなく、“粗い塩”ではライトゲームワームに必要な精度で安定して配合するのが難しかったのです。

その点、ナノソルトは粗塩に比べて、素材中へきれいに分散させやすい。ここが最大のメリットです。

・粒が細かいほど、製造時に素材の中に均一に散らしやすい
・粗塩のようにボディ内部で偏りにくく、比重バランスを安定させやすい
・ワーム素材の軟質PVCとの馴染みもよく、局所的に硬い部位ができにくい
・大粒の塩のように、フックを刺した時に邪魔をしにくい
・必要以上に素材のしなやかさや強度を損ないにくい

もちろん、どんなものでも入れすぎれば素材は変わります。硬くもなるし、伸びも落ちます。だから大切なのは、何を入れるかだけではなく、どれだけ入れるか、どう分散させるか、そしてそれぞれのワームの動きに対してどこまで許容するかです。

これを料理でイメージするなら、今回のナノソルト配合は「素材の味を活かすための薄塩仕立て」だと思っていただいて結構です。味を変えてしまうほど入れるのではなく、素材の良さを引き立てるための塩。そういう思想で作り上げた企画なのです。

上下二層構造を活かした低重心設計の恵み

そして、ベイティとスワールテールシャッドXGには、ナノソルトを配合するうえで、もうひとつ大きな利点(相性でもある)がありました。それは両者ともに、金型設計が「上下二層」になっているところです。

ありていに言えば、今回のナノソルトは“ワームの下部層だけに配合”しています。全体へ均一に入れるのではなく、下側に効かせる。これによって、元々抜群だった両者のスイムバランスが、さらに安定する方向へ向かったのです。

これはラボでも、思わず声が出るほど嬉しい結果でした。

ナノソルトを入れること。それを細かく分散させること。そして上下二層構造の下部層へのみ配合すること。

この三つがうまく噛み合ったからこそ、ただ比重を上げるのではなく、海中姿勢とスイムバランスを整える方向へ持っていけたのです。

実釣性能を壊さない配合設計

今回の配合で一番大切にしたのは、従来のワームが持っていた良さを壊さないことです。そのうえで、海水中での姿勢、潮なじみ、飛距離、吸い込みの自然さを、少し底上げすること。決して派手に変えるためではありません。むしろ、派手に変えないために、ナノソルトという細かな粉体を選んだと言ってもいいでしょう。

従来のベイティやスワールテールシャッドXGを使ってきた方は、入手されたらまずはいつも通りに使ってみてください。いきなり使い方を変える必要は全くと言って良いほどありません。

いつものジグヘッドで投げる。いつものスピードで巻く。いつものレンジへ入れる。その中で、潮への入り方や、手元に返ってくる感覚をぜひ感じてほしいのです。

「重くなった」というより、「海の中で居場所が分かりやすくなった」

きっとそんなふうに感じてもらえるはずです。つまり、ナノソルト入りのベイティとスワールテールシャッドXGは、“海の中でもう一段分かるワーム”へと、さらなる成長を遂げたのです。

発売時期もあっという間に近づいてきます。皆さんの手元に届いたら、ぜひ、いつものフィールドで、いつもの使い方から試してみてください。そして、進化したインクスソフトベイトの使い心地と、その裏側にある開発ストーリーも、ぜひ一緒に楽しみながら味わっていただければと思うのです。

 

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