ジョインテッドクロー。
これほどまでにバスを、そして釣り人を魅了し続けるルアーを記者は他に知らない。
来年2024年で20周年を迎えるその偉大なルアーの功績について、生みの親である平岩孝典氏を取材、ここに改めてなぞる。
なぜジョインテッドクローは釣れ続けるのか
ジョインテッドクローがいかにして日の目を見ることになったのか、平岩氏に聞くと「作ろうと思って作ったルアーではないんです」と笑う。
ことの発端は遡ること25年前、当時まだプロトだったトップウォータープラグ「Z-CLAW」のテスト中のできごと。
その日もフィールドでテストを行っていて、回収中にたまたまS字軌道を描くという設計上のミスに気付く。当時、ルアーと言えばリップがあることが当たり前でアクションはウォブリングかローリングが基本。一部スプーンなどで使い方次第でS字を描くモノはあったが、プラグがS字を描くいう概念はなかったと。
そして、そのミスによって生まれた“S字アクション”に激しくバスが反応したという事実。それこそが「S字アクションがバスに効く」ということを見出した瞬間であり、作ろうと思って作ったルアーではないという理由だと言う。
S字アクションがバスに効く。その事実を発見するキッカケとなったペンシルベイト「Z-CLAW」はヨーロッパでも高い人気を誇った。とりわけS字アクションがバスに効くという発見はこれまでにないもので、実際「Z-CLAW」のパッケージには「フロロカーボンラインでゆっくり巻けばS字を描く」という旨を記載したという。
ただし、綺麗にS字を描くというにはまだまだストライクゾーンが狭い=もろもろの条件をクリアしないと綺麗なS字アクションが出ない。ただ巻くだけで綺麗なS字アクションが出せるルアーが欲しい。Z-CLAWの発売から2年、開発期間約3年という歳月を経て登場することとなったそのルアーこそが「ジョインテッドクロー」である。
ファーストサンプルはジョイントでもなければサイズも148mm程度。そして魚の形を意識はしているが決して「鮎」ではなかった。数々のトライ&エラーを繰り返していく中で、より水を噛むとの理由でジョイント仕様になり、サイズも決まっていく。そして形状は、どうしても「鮎」になってしまうという結果論。
テスト中にS字アクションを流れのあるエリアで使いたいと考え、いかに流れに影響されずに綺麗なアクションを出せるかを求めてブランクを削っていく…と偶然か必然か「鮎」の形になる。逆に言えば鮎は普段から流れのある清流に生息しており、理に適った合理的な形状をしているとも。
…偶然の積み重ね、そして結果論。机上の空論ではない、確かな裏付けのもと完成したルアー。それこそが最も大きな釣れ続ける理由なのかもしれない。