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今江克隆のルアーニュースクラブR「革新的シャッドテール・スラッシュバンビ!その驚異的な釣獲能力ゆえの憂鬱と決断」の巻 第1046回

連載:今江克隆のルアーニュースクラブR
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真冬の野池で起こった!

それは最初、野池ロケ中に起こった。

真冬にもかかわらず超デッドスローでも動くバンビスコーンにはアタリが頻発する池があった。だが、喜び勇んで思いっきりフッキングをした瞬間、「乗った!」と思った直後にスッポ抜け。

回収するとテールだけを喰いちぎられていた。

これはシャッドテールにはよくあることなので気にせずリグを付け直し、再度投げるとまたアタリ、今度こそはと渾身のフッキングをすると再び一瞬乗ったかと思ったらスッポ抜け。またもテールだけ喰いちぎられていた。

2度あることは3度あるというが、この後、さらにアタリは延々と続き、全く同じことの繰り返し……気が付けば6本パックのプロト全てを使い切って1尾も釣れないという事態に遭遇した。

この池は平均サイズこそ小さいが、バスの魚影が濃い野池だった。

しかし、元気な小バス達には、「スラッシュバンビ」の生き物のような透明テール部分の動きがエビかギルやフナの稚魚に見えるのか、そこを集中的に咥えにきている感じだった。

だがアタリだけは一人前に出るうえ、小バスの口に「極薄硬質テール」部分が完全ロックされた状態で本能的にフルフッキングをしてしまうことで喰いちぎれが頻発したのである。

すぐにそれを確認するために真冬に石川県にあるドリームレイクまでテストに行ったが、口の小さい養殖系バスに実に最初の十数投で6本もあっさり食いちぎられてしまうという悲惨な結果になってしまった。

アワセなければ食いちぎられることはないが、口腔内にテールロックした状態でフッキングしたらひとたまりもない……。

「スラッシュバンビの憂鬱」の始まり

この時、すでに「スラッシュバンビ」の本金型は、ほぼ完成してしまっていた。

ただ、「スラッシュテール」部分は別金型で、ボディ金型と組合せて成型する別体手法だったため、この段階でテール金型を一旦破棄し、テール部分を強化改良することを決めた。

それが2018年から2021年にわたる苦難の金型改造「スラッシュバンビの憂鬱」の始まりだった。

それから2年、「絶対にアクションを変えない範囲内」での本金型の彫り足しによる足首太さの変更強化、さらには極薄硬質テールの口腔内ロックを少しでも避けるため、テール素材を高硬度素材から中硬度シリコンに変更、さらにはコイルインサート成型法などイマカツ歴代最高数の試作金型を作っての改良を続けた。

初期型は極薄硬質テールだったが、小バスの口腔ロックを少しでも回避するため、後期型は薄型中硬質シリコンテールに改良された

そして、もう限界というところまで徹底改良し、再び2021年1月、ドリームレイクで最終決断のテストを行った。

しかし、結果は前回に比べれば格段に耐久性は上がったものの、テールをガッチリ咥えられてのフルフッキングにはもはや物理的に耐えられるものではなかった。

逆にアタリがあっても離すまでアワセなければそれで喰いちぎられることはなく、頭から咥えてくれるバスでも大きめの個体ではアワセなくても勝手に掛かってしまい、テールがちぎれることもなかった。

結論的には30cm以上のバスならなんら問題はないが、20~25cm程度の元気なチビバスが多いと、もはや物理的解決は不可能という結論に至った。

もはやこれを製品としてGOするか否かは、私の判断一つになった。

足首の強化から、コイルスプリング式に改良を重ねた「スラッシュテール」。ワーム成型技術の極みなのだが…

動きと釣獲能力は自信を持って唯一無二、群を抜いていると自信を持って言える。

ただ、耐久性をユーザーがどう評価するか……おそらくフィールドの状況次第で、このワームの評価は是と非に二分されるだろう。

自分がドリームレイクで出した結論は販売店に迷惑が掛からないよう、「お蔵入り」だった。

しかし、ドリームレイク後、余分の最終サンプルを試しにローカルスタッフに何もいわず渡してみたところ、テールの喰いちぎられなど何事もなかったかのように、すぐに予想通りの釣果報告が帰ってきた。

そして最も重要だった発案者シカキング君の意見も「このシャッドテールをお蔵入りさせるのは、あまりにも勿体無くないですか…」との返答だった。

今江的に「お蔵入り」を決断した直後、余分のプロトを渡したスタッフがデカバス連発、「もったいないお化け」が各地に出現し始めた

彼のこの言葉はまさに自分の本心を突いており、すでに本金型が存在する「スラッシュバンビ」を春に合わせて最低数量だけでも生産し、世にその唯一無二のアクションを知ってもらうためにWEBで限定販売することを、再び考えせた。

その唯一無二のアクションを知ってもらうために……

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