消えた「ゴッツンバイブ」その先へ
NEWゴッツンバイブ

JAZZ社の解散とともに、事実上製造不可能となった「GOD’n Vib(ゴッツンバイブ)」。
このメタルバイブ、元を辿ればJAZZのオリジナルモデルだった。ところがセールスがうまくいかず、長らく倉庫の片隅に眠っていた。ある日JAZZ社を訪れた際、社長から、「これ、使ってみてください」と手渡されたのが始まりだった。
自宅へ持ち帰って、しげしげと眺める。触る。立てる。寝かせる。ひっくり返す。すると、なかなか面白いことに気がついた。まず目についたのが、顎から鼻ヅラにかけてステンレス板が剥き出しになっていることだった。普通ならボトムへ着底した時、最初に当たるのは柔らかい鉛のシンカー部分だ。ところがこいつは違う。硬く、響きのいいステンレス板が岩などへ直接当たる。つまり「カツン」という着底の瞬間をアングラーの手元へ素早く伝えると同時に、その硬質な接触音そのものでも根魚へアピールする。
なるほどなあ、と。単純だけれど、よく考えてある。そして実際に使ってみると、これが素晴らしくよく釣れた。同時に、つくづく思い知らされたことがある。ルアーというものは、釣れるから売れるとは限らない。逆もまた然りなのだけれど(笑)。
ともあれ、一気に気に入った僕はフックセッティングを見直し、カラーリングも丸ごと変更。さらにはネーミングも「ゴッツンバイブ」と改め、INXで引き受けさせてもらうことにした。以来8年間。INX.labelブランドの中では決して派手な存在ではなかったけれど、この手のハードルアーとしては実に安定して売れ続けてくれた。ところが一昨年、2024年。JAZZ社の解散に伴って製造環境そのものが失われ、ゴッツンバイブも一旦その歴史を閉じることになった。
……とはいえ。僕がそのまま終わらせるはずもない。
型を残すのではなく、良さを残す

当然のごとく、この歴史は受け継ぐことにした。
ただし、旧ゴッツンバイブをそのまま再現する気は最初からなかった。それなら単なる復刻である。僕らがやりたかったのは、旧型のどこが優れていたのかをもう一度バラバラにして考え直し、その良さだけは絶対に殺さず、今作るなら何を足し、何を変えるのかということだった。
そこでINX LABOの元、一から設計を見直した。これが思った以上に長かった。ああでもない。こうでもない。
サンプルを泳がせては修正する。
ボトムへ落としてはまた修正する。
そんなことを二年間繰り返し、ようやく製品版原型と呼べるところまで辿り着いた。
そして今回かなりこだわったのが、「落ちる」「立つ」「動き出す」この三つだ。

メタルバイブというと、どうしても巻いた時のバイブレーションばかりに目が行きがちだ。
でも僕は、この手のルアーではフォールも立派な釣りの時間だと思っている。いや、ボトムを絡める釣りなら、むしろこちらの方が重要になる場面さえある。そこでまず、フリーフォールさせてもクルクル回転しないこと。これを徹底した。ラインテンションを抜いて真っ直ぐ落としても、姿勢を大きく崩さない。そしてテンションを掛けたカーブフォールでは、さらに綺麗なフォール姿勢をキープする。
つまり、「落としている時間」を捨てないメタルバイブ。ここはかなり重要な部分だと思っている。そして着底すると、今度は低重心設計と扁平にしたベリーが効いてくる。ボトムで、立つ。ベタッと横倒しになりにくい。これは単に格好の問題ではない。根掛かり回避にも効くし、次のアクションへの立ち上がりにも効いてくる。人間だって寝転がった状態から走り出すのと、クラウチングスタートの姿勢から飛び出すのでは違うでしょ。こいつはボトムで、次の一歩を待っている姿勢で、5センチで目を覚ます。
僕が今回かなり気に入っているのが、このアクションの立ち上がりだ。大きくロッドをあおる必要はない。竿先をわずか5センチほど持ち上げるだけで、ブルッと動き出す。これ、地味に見えるけれどボトムゲームではものすごく大事です。50センチ持ち上げなければ動かないルアーと、5センチで動き出すルアー。同じ一回のリフトでも、ボトムから離れる距離がまるで違う。
根魚を狙っている時などは特にそう。魚が底から20センチ上にいるのに、ルアーだけ1メートル上へ飛んでいっても仕方がない。必要なのは、大袈裟に踊らせることではない。魚の目の前から逃がさず、その場で生命感だけを立ち上げること。
ほんの少し竿先を持ち上げる。ブルッ。そしてまた落とす。
この小さな上下動だけで、一つのメソッドが成立するようにしたかった。
お尻には二枚のウイローリーフ

さらに今回は、リアへウイローリーフブレードを二枚セットした。
ボディそのものが発するバイブレーションに、二枚のブレードによるフラッシングと波動を加えるためだ。ただし、これは単純に「アピールを強くしたかった」というだけではない。ボディが震える。その後方で二枚のブレードが仕事をする。一つのルアーの中に、性質の違う二つの刺激がある。
僕の感覚で言えば、一人で鳴らす楽器ではなく、小さなセッションになった感じに近い。しかも、それぞれが主張しすぎない。ここはずいぶん調整した。
三つのアイで性格を変える

そして背中には二カ所のアイ。さらに今回は、おでこにも一カ所アイを設けた。計三カ所である。
背中側の二つは、基本となるメタルバイブとしての性格を使い分けるためのもの。そして面白いのが、おでこのアイだ。ここへラインを接続すると、通常のメタルバイブとは少し違った顔を見せる。バイブレーションは弱くなり、ブレードジグ的なアクションへ変わる。しかも早巻きができる。つまり、ボトムへ落として、小さくリフトして使うだけではない。
状況によってはレンジを上げて、横方向へ速く探っていくこともできる。三つのアイは単なるセッティング違いではなく、同じボディの中に別のギアを仕込んだようなものだ。
ローギアでボトムを舐める。ギアを入れ替えて横へ走らせる。
一つのルアーなのに、釣り人側の発想次第で役割を変えられる。僕はこういう道具が好きなんですよ。
フックも一つの正解に固定しない

基本となるのはダブルフックセッティング。ボトムを積極的に絡めながら使うことを考えれば、根掛かりとのバランスも含めて、まずここが基準になる。
一方で、フロントフックを外し、リアだけにシングルフックをセットする仕様も用意する。これも使う場所と魚次第だ。障害物の多い場所をより大胆に通したい。あるいはフックポイントを後方へ集約したい。そんな時には、こちらの方が都合がいい場面も出てくる。ルアー側から「この使い方をしなさい」と決めつけるのではなく、最後の味付けは釣り人へ残しておく。
このシングルフックセッティングは、2枚のウイローリーフの中にサンドイッチ状にセットする。一見フッキングが悪そうに思うかもしれないが、その感想は完全に裏切られるほどフッキングは良いし、何よりブレードバイトが多いシーンで非常に強いセッティングとなる。
ゴッツンバイブを復活させたかったわけではない

二年間やってきて、改めて思う。
僕らが作りたかったのは「新しいゴッツンバイブ」ではなかったのかもしれない。旧ゴッツンバイブには、確かに素晴らしいものがあった。だから8年間売り続けたし、僕自身も気に入って使ってきた。でも、製造できなくなったから同じものをもう一度作る。それだけなら、僕は二年も掛けなかったと思う。残したかったのは形ではなく、思想だった。
ボトムを感じること。根魚に強いこと。難しい操作を要求しないこと。
そして何より、使っていて「こんな使い方もできるんじゃないか?」と釣り人に思わせる余白があること。そこだけは受け継いだ。その上で、フォールを磨き、ボトムで立たせ、5センチで動き出させ、二枚のブレードを背負わせ、三つ目のアイまで付けた。気がつけば、ずいぶん違うヤツになった(笑)。

でも、それでいいのだと思う。受け継ぐというのは、昔と同じ形を残すことではない。昔の良さを、今の自分たちなりにもう一度問い直すことだ。JAZZの倉庫の片隅で眠っていた一個のルアーを、僕が面白がって拾い上げた。
そこから8年。一度は途切れた。そして二年間、また散々いじくり回した。そうしてようやく、次の形が見えてきた。
さて。こいつが水の中で、今度はどんな歴史を作ってくれるのか。ここから先を作るのは、僕らではなく魚と釣り人である。
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