赤松 拓磨(Takuma Akamatsu) プロフィール
水温が12度、11度と下がっていき、いよいよ10度を下まわるようになると、完全に冬パターンがはまるようになる。
積極的に中層やシャローでベイトフィッシュを追い回す晩秋とは対照的で、冬のバスは深場へ落ちる。
深場といっても、平地のため池では、冬に減水していて最深部でも1~2mしかないが、それでも池の中で深い場所にたまる。
バスは、シャローから徐々に深場へ移動し、枯れウィードや岩、水門の延長線上のスリット、あるいは急なブレイクに身を寄せボトムに張り付いている。
冬バスというと釣り場から遠ざかるバスアングラーも多いため、むしろ釣り場が空くし、バスの付き場も推測しやすいと赤松は冬のバスはけして嫌いではない。
なにしろ、50cmオーバーを3本、45cmオーバーを6本、半日かそこいらで釣ったこともあるくらい冬バスはけして釣りづらい対象ではない。
「泥のボトムなら、バスは少し潜っています。じっとして動かない」
そのバスの目の前でメタルバイブをリフト&フォールするのが冬バスのド定番攻略法。
「通常はリフト&フォールで大きく誘いますが、僕はショートジャーク気味に強く短くリフトします」
腕を大きく動かしメタルバイブを50cm~1mほど上下させるのが一般的なメタルバイブの動かし方。
「それだとメタルバイブの移動距離が大きくなりすぎるんですよ。付き場がわかっていて、バスが動かないんだったら、バスの目の前で1回着底するよりも、3回着底する方が絶対チャンスが広がる」
どんなに真上にリフトしようと思っても実際には斜めに引くことになるので、30cmのリフトと1mのリフトでは1キャスト当たりの着底回数に大きく差が出る。そこで、まず、リフトで持ち上げる距離を短くし、同じ距離を細かく刻むようにする。
「30cmも持ち上げれば、ボトムに張り付くバスの視界から、一瞬、ルアーの存在を消すことができます」
視界から消えて再び現れることでリアクションを起こしやすくする。
「ショートジャーク気味に、強めに短くシャクることでメタルバイブにダートの動きを加えることができます。そうすると30㎝の上下動にジグザグのダートが加わるので、誘う回数も増え、リアクションも起こしやすい」
このテクニックを追求するにあたり、赤松の使うタックルは自然とスピニングに落ちついた。
「まず、PEラインを使います。ロッドは長めで硬め。硬いというかバットがしっかりしたロッドがいい。ただ、いわゆる硬いだけのスピニングならいろいろありますが、ティップが繊細なモデルとなるとない。アベンジS74MH-Fをプロデュースするまでは、それこそバスロッドはもちろん、シーバス、エギング、アジング、ロックフィッシュなど、考えうる限りのロッドの中からジャストマッチするものを探しました」
スピニングにおけるメタルバイブメソッドを手掛けたのがかれこれ5~6年前になるという。ひとまず納得できるものには巡り合えたのだが、流用ゆえの使いづらさがあった。
「まず長さ。8フィートに近い長さではため池をはじめとしたバスフィールドでは長すぎる。常にバックスペースをとれるとは限りませんから。そうかといって7フィートを切るようでは短い。標準的なリフト&フォールが快適にでき、ハイピッチショートリフト&フォールをこなせる長さは、突き詰めた結果、このマテリアルでは7.4フィートでした。しっかりしたベリーとバットが欲しいので、パワーはMH。バットジョイント方式の効果もあって、バットの張りは絶妙に仕上がっています。それでいてティップには繊細さを追求した」
張りが強くパワーがあるスピニングは世に数多くあるが、そういったタックルでは思うようにフッキングやファイトができなかった。
「そもそも強くて張りのあるタックルがいいなら、ベイトでもいいわけですが、メインラインにPEを使うため、ただでさえ遊びが少ない。フォールして次のリフトの際にバスがバイトしていると、ガッ、と一瞬、手元に感じてバレてしまうケースがすごく多かった。ベイトよりはスピニングの方が遊びがあるというか、間が作り出せる」
それでもティップの張りが強いとバレや身切れが多い。これがソフトなチューブラティップを搭載することでバイトの瞬間、ティップが入り込む。アワセまで一瞬の間を作り出し、深くフッキングできるケースが増える。
「あるいは薄皮一枚のフッキングだったとしても、ティップの柔らかさとスピニングのドラグならランディングまで持ち込めます」
こうして生まれたのが、メタルバイブスペシャルと表現したいアベンジS74MH-Fである。
「メタルバイブの使いやすさを追求したのは確かですが、この1本はオカッパリバーサタイルですよ。タックルを複数持ち込みにくいオカッパリでは1本で幅広くカバーできるロッドの存在はありがたい。特にベイトを多用するバスでは、スピニングはせいぜい1本にしたい。そういうときに重宝します」
メタルバイブ以外にどんなルアーを使えるのだろう。
「まず、バックスライド系の高比重ワーム。MHの強さでMLのティップなのでジャストマッチします。あとは、小型クランク、小型バイブレーション、ミノーも使えます。冬ならシャッドのただ巻きもいいですね。スモールラバージグのつるしもそれなりにはこなしますので、僕にとってはマストな1本です」
メインラインはPE0.8号でリーダーはフロロカーボンの10ポンドをセットする。
使うメタルバイブは3種類、フルメタルソニック、サーキットバイブ、リトルマックス。フルメタルソニックはダートしやすく、まっすぐフォールする。サーキットバイブはリフト時のダートはしないもののフォールでスライドが入る。リトルマックスはリフト時にもフォール時にも適度なダートやスライドが入る。
「どのアクションがベストというものではなくて、状況に応じて使い分けますね。メタルバイブは強いルアーですから、スイッチを入れたりする能力が高い。その日の1投目から50cmオーバーが食ってくるという経験は何度もあります」
その分、スレるのも早い。
最深部の水深が1m~2m程度の皿池なら、使うメタルバイブは軽く3.5~5gを使う。
「浅いのでフォールの時間を稼ぎたいですし、ボトムをとりやすいので重さはいりません。あまり重いと、泥に埋まってしまってリフト時に遅れるんですよ」
もちろん、ダム湖や深いため池では重いメタルバイブを使う。
「僕はため池に行くことが多いので深いポイントで4~5mくらい。そういうポイントでは7~10gを使います。風が吹いた場合でもストレスなくボトムを感知できます」
ひとりのアングラーとしては現状のメタルバイブのラインナップには満足しているが、ひとりのルアーデザイナーとしては苦悩している。もちろん、釣れるルアーを模倣することはたやすい。しかし、オリジナリティを追求していないルアーをよしとして、自分の作品として世に送り出すことには抵抗があるのだ。
「ただ、メタルバイブのように板と鉛のボディで構成されるルアーの場合、同じアクションにしようとすると、見分けがつかないほど全く同じ形状になってしまう」
よくできた3つのメタルバイブのいいとこどりをすることもできる。しかし、何か新しいスパイスを封入できなければ自分の中で満足できないのである。
「ひとつにはボディ本体の板の素材ですよね。これは選択肢は少なからずあります。薄くて硬いか、軽い素材が適しています」
あとはボディを長くしてダート性能をあげることもできるが、それはアクションの初速を落とすことになりかねない。
「メタルバイブは、僕のなかでもこだわりのあるルアーなので、自らプロデュースする以上は、斬新とまではいかないまでも独創的なものにしたいですね」