今江克隆のルアーニュースクラブR「オカッパリ&ボート両用の最高峰パワーフィネススピン誕生!『スパイダースピン611MHX』を紹介」の巻 第1128回
吊るし専用パワースピニング「セルペンティ・スパイダースピン611MHX」
さて、4週連続で続いた「カレイド」の2023年新機種発表も、ひとまず今週でラスト。
ひとまずというのは、現時点でプロトアップが終了し生産体制に入れており、2023年前半のリリースがほぼ確定しているロッドということだ。
そのラストを飾るのが、こちらも実に2020年から2年以上のテストを繰り返しようやく完成した、「昔提灯(チョウチン)、今吊るし」こと、吊るし専用パワースピニング「セルペンティ・スパイダースピン611MHX」である。
このロッド、名は体を表すの通り、カバー越しに天からクモが降りていくかのように密かに、気配を消し、着水音、果てはラインの存在すらバスに見せないパワーフィネスの代名詞ともいえるロングパワースピンだ。
難航したのはレングス設定
「スパイダースピン」の原点は、今から18年前の2004年、セミ型ソフトクローラー「ダイイングシケーダー」による「提灯パワーフィネスロッド」として大流行、一時代を風靡した超人気ロッド「スピンコブラ」、そしてそれをさらに長く、パワーアップさせた「スピンコブラ・クワトロセブン」の正統後継機種である。
「スパイダースピン」を開発するにあたって最も難航したのは、実はそのレングス設定だった。
もともと66Mの「テムジン・コブラ」をスピニング仕様に改造したのが「スピンコブラ」の発祥で、その系譜からパワーフィネスの基本は長らく66がメインになっていた。
直近の「ブッシュサーペント」がそういった意味では「スピンコブラ」の最新型ともいえるだろう。
そういった流れから「カレイド・セルペンティ」では、ボーター用のショート仕様「ブッシュサーペント66MH」、オカッパリのロングキャスト仕様「キングサーペント711MH」と分化する形でアップデートを果たしてきた。
しかしながら、素材面での画期的進化や、トーナメント発祥のテクニックである「提灯」が「吊るし」という名でオカッパリに急速に普及再流行したことでパワーフィネスロッドのニーズにも大きな変化が表れた。
それは、ベイトフィネスをはるかに上回るロッド&ライン強度で、さらに超軽量ルアーをヘビーカバーの真上からカバーを利用して無着水音で吊るして警戒心の強いビッグバスを仕留めるというスタイルだ。
ボートからのアプローチが前提のライトで精密なベイトフィネスでは決して獲れないヘビーカバー越しのバスを、スピニングタックルで仕留めてしまうパワースタイルは、ボーター以上にオカッパリの武器としてベイトフィネスを抑えて急速に一般化することになる。
それはすなわち、通常16lbライン以上相当のヘビーベイトタックルで撃ち込むカバーフィッシングを、ベイトタックルでは不可能な軽量ルアーを使ってスピニングタックルでやってしまう超攻撃的な釣り方だ。
そのためにこの釣りに要求されるロッドスペックは、まず22lb相当のPE1.5号に耐えきる強靭さと、同時に3〜7gの軽量ルアーを気持ちよく投げられて繊細に操作する軽快さ、さらに場合によってはカバー越しに50cmクラスを、場合によっては抜きあげることができる火事場の馬鹿力を持っていることが必要となる。
オカッパリとトーナメント両面から開発を同時進行
この最後の火事場の馬鹿力は、自分からカバーに突っ込んでいけるボートの場合は必要ないかもしれないが、オカッパリではこの力こそが必要になるケースが多々ある重要なポイントだ。
それゆえに「スピンスパイダー」の開発にはトーナメントとオカッパリの両面から同時進行で開発する必要性があった。
そのため信頼できるロッドビルド経験に長けたオカッパリアングラーとの平行テストに1年間を要した。
その結果から導き出された「スピンスパイダー」のレングスは、「ショートグリップ」化による「実効レングス7フィート相当」という結論に達した。
7フィートではないのがキモで、7フィートを超えるとロッドは強度を確保すると確実にヘビーな感覚に移行する限界線だと自分は感じている。
ゆえに6フィート内の操作感と軽量さ、同時に2kgリフトを可能にする強靭性を得るには「実効レングス7フィート」の611というのが、絶対レングスとの結論に達した。
「スパイダースピン」のブランクス構成、グリップ仕様は?