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【編集部の小噺】手の掛かるほ子ほどかわいい。メーカー担当者に訊く!「開発に苦労した1本は珠玉の1本だ」/ヤマガブランクス

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「手の掛かる子ほどかわいい」 なんてよく言いますが。

メーカーさんにとっての手の掛かる子は、裏を返せば「手間暇掛けたこだわりのアイテム」になるんじゃないか、なんてフト思いまして。

今回の編集部の小噺はメーカーさんにご協力いただき「一番手の掛かった思い入れのあるアイテム」を紹介していこう!という企画。

どんな紆余曲折があったのか、どれだけ振り回されたのか、結果どんなアイテムができたのか…乞うご期待!

 

国産ブランクスメーカー「ヤマガブランクス」さんの場合

より良い製品づくりを目指し、工場内で設計者と職人がコミュニケーションを取れるように、また多くのプロトロッドのテスト・改良をスピーディーに繰り返すために、ブランクの設計・巻きつけ・塗装・組み立て・出荷まで全てを国内自社工場で一貫生産。

ブルーカレント、ブルースナイパーなどなど、名だたる名竿を輩出する「ヤマガブランクス」。王道系ロッドから、ターゲットを絞り込んだ特殊なモデルまで、数多くのラインナップが魅力のロッドメーカーです。

ヤマガブランクス(YAMAGA Blanks)

釣竿製造の株式会社山鹿釣具のオリジナルブランドとして2008年に誕生したロッドメーカー「ヤマガブランクス」。より良い製品づくりを目指し、工場内で設計者と職人がコミュニケーションを取れるように、また多くのプロトロッドのテスト・改良をスピーディーに繰り返すために、ブランクの設計・巻きつけ・塗装・組み立て・出荷まで全てを国内自社工場で一貫生産し、その高品質なロッドに定評がある。

どのロッドも個性があり、こだわりが詰まっていそうで、製品化まで一筋縄じゃいかないんじゃないか…だからこそ!その中で一番手の掛かったアイテムとなると、さぞかしおもしろい話が聞けるんじゃないか?!と勝手に期待してしまう訳で。

それでは!さっそくスタッフさんに訊いてみます!

 

一番手の掛かった=こだわりぬいた珠玉の1本

①:アイテム名を教えてください

1本と言えば、ティップラン用のロッド「BattleWhip TR 63/N Type-N / No Look」でしょうか。

このティップランシリーズはヤマガブランクス初となるソリッドティップを採用したシリーズで、シリーズ全体でもかなり苦労しました。

とりわけ「TR 63/N」はNo Look…つまり、ティップを見なくても手元にアタリが伝わることを目指し、ブルーカレントシリーズで培った高感度性能や操作性を踏襲して作った超々高感度モデルで、苦労したなぁという印象です。

 

②:開発のキッカケ

2016年に、それまでラインナップされていなかった「ティップラン用のロッドを作ろう!」となったのがキッカケです。

プロト時のバトルウィップTRシリーズ

開発陣やテスターさんと連携しつつ、当初はチューブラーで曲がる乗せ重視のロッドをイメージして着手したんですが、水深やウエイトにどうしても縛りができてしまう…いうことで、開発は一旦ストップ。

それから数年経って、もう一度着手することになったんですが、ティップランロッドは市場にかなりの種類が出回っている状況。同じようなロッドを作ってもな…という想いがあり、差別化を図るべく「掛けにいけるロッド」を作ろうと。

そうして、もっとも高感度で掛けにいくタイプ(BattleWhip TR 63/N Type-N / No Look)、加えてシャローでの使用を想定した汎用性が高いタイプ(BattleWhip 73/S Type-S / Shallow)、ハイパワーでディープでの使用を想定した(BattleWhip TR 69/D Type-D / Deep)という、全3機種に絞り込み、再開発がスタート。

 

③:ここに苦労した

弊社にとって初となるソリッドティップを使用したことで、バランスのとり方に一番苦労しました。

釣りの特性、ロッドの操作性などから「ティップのブレが素早く収束すること」が不可欠だと考えたんです。レスポンスの向上も視野に入れ、その上でベストなソリッドティップの長さや硬さを決める必要がありました。もちろんティップだけでなく、ブランクスもティップに合わせて調整する必要があります。ブランクスメーカーという誇りもあるので、ソリッドティップ以外のブランクスにもかなりこだわりました。

もっと言うと、疲れにくいグリップの位置や形状など…ほとんどの部分が苦労したロッドと言えます…。

 

弊社の場合、自社工場があって密にコミュニケーションが取れる=こちらのイメージが伝わりやすい環境があるので、基本的にプロトロッドの本数というのは少なめです。それでもテスターさんに協力してもらい、自身も毎週テストに通って、微妙なニュアンスの違いなどを見直し、結局はバット部分2回、ティップ部分を2回作り直して調整、煮詰めていきました。

 

④:苦労をした”甲斐”

そうしていよいよ完成、2019年に登場したのが「BattleWhip TR シリーズ」。

 

社内からは「ティップランはこのロッドじゃないとムリ」「このロッドのおかげで釣果に繋がった」そんな声をよく耳にします。またユーザー様からも「手にしやすい価格ながらアタリが取りやすい」とか「長さがちょうどいい」という声をいただいております。

 

そんな声を聞くと、ホント苦労した甲斐があったな…と、テスターや開発陣と喜んでおります。

また、実はこのロッドがキッカケとなり「BattleWhip IM」というソリッドティップを採用したモデルへと派生、新たな可能性を見出すこともできました。

 

⑤:メーカーだから言える「実はこんな釣りにも使えます」

もちろんティップラン専用で作ったロッドではあるんですが、その感度の良さから「バチコンアジング」に使用したり、シャローエリアの「タチウオテンヤ」に使用するスタッフも。

スペック的にムリのない範囲であれば、ぜひいろいろ試してみて、逆にこんな釣りに相性が良いぞ!なんて教えてもらえると嬉しいですね!

 

編集後記

お話を伺ったのは公式Youtube「YAMAGABlanks」でもおなじみ、先日は90オーバーのランカーシーバスを釣り上げた根っからのアングラー、スタッフの藤川 敏広さん。「営業」という立ち位置から、テストに関わったテスターさんや、開発陣の声を間近に聞かれており、今回の取材にも快くご対応してくださいました。

実際お話を伺うと、すごく楽しそうにお話される藤川さんの声が印象的で、手が掛かっただけあり「良いロッドだ」なんて声を聞くと嬉しいんだろうなぁ。と、しみじみ。

苦労したロッドだけが良いロッドという訳はなく、手の掛からない優等生だって、最初から完成度が高かったというだけで、作り手の想いが込められた良いロッドです。今、無造作に部屋の片隅に並んでいるロッド、積み上げられたリール、壁にぶら下がったままのルアーにもそれぞれ作り手の想いが込められているはずで。…今夜あたりメンテナンスしようか、なんて思ったり。