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【PE0.8号100m×30mm径スプール】3~10gをフルキャスト!INX.Label×DAIWA Technology×SLP WORKSコラボの夢のリール「IR CT SV TW PE Special」

連載:加来 匠レオン「ライトゲームマニア」
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みなさんこんにちは。インクスレーベル代表のレオンこと加来匠です。

レオン 加来 匠(Kaku Takumi) プロフィール

加来匠(かく たくみ) 中国&四国エリアをホームグラウンドとし、メバルやアジ、根魚全般の釣りを得意とする生粋のソルトライトリガー。レオンというのはネットでのハンドルネームとして使い始めたが、いつの間にか、ニックネームとして定着。ワインドダートやSWベイトフィネスなどを世に広めた張本人、新たなスタイルを常に模索中! 「大人の遊びを追求するフィッシングギアを提供する」ことを目的としたプライベートプロダクション「インクスレーベル」代表もつとめる。

今回は秘密裏のうちに進めていたインクスレーベル一大企画のご紹介。2024年2月、ついに、INX.LabelとDAIWA Technology、SLP WORKSのコラボリールである「IR CT SV TW PE Special(以下、IR CT)」の一次情報発信の運びとなりました。

受注開始や出荷開始時期等に関してはまた追って正式にアナウンスいたしますし、また本連載でもお知らせいたしますので、しばらくお待ちいただきますようよろしくお願いいたします。

IR CT SV TW PE Special

さて、このIR CTというニューマシンですが、「ライトソルトやミドルゲームに最適化させたベイトキャスティングの実現」を目的に開発したベイトリールです。

PE0.8号を100m巻けるラインキャパシティを持つ30mm径のスプールを搭載しており、3〜10g程度のさまざまなリグを快適に“フルキャスト”できる専用のブレーキシステムを搭載しているのが特長になります。この“フルキャスト”というフレーズが最も重要なところですので、ご注目いただいた上で以下本稿をしっかり読み込んでいただければと思います。

比較的軽量なリグを使用するライトソルトゲームにおいてはオープンエリアで遠投することが多く、ベイトリールで快適に“フルキャスト”できる…これを実現する上で、アングラーにとって最大の障壁となるのがキャスト時のバックラッシュの不安です。既にライトソルトゲームでベイトリールを使われている方の中にも「スピニングのように、もっと気を使わずにフルキャストができたら…」と感じている方も多いのではないでしょうか。このバックラッシュという、ベイトリールにとってはある意味で宿命ともいえる課題の解決に挑んだのが、IR CTおよびそのPE専用スプールなのです。

そこで今回は、IR CT最大の特徴でもあるこのPE専用スプールの詳細について、メインで携わった「知久正二三(ちきゅう・まさふみ)」氏にエンジニアの立場から解説を書いてもらいましたので、以下ご紹介いたします。

知久 正二三(Masafumi Chikyu) プロフィール

大手OA機器メーカーに勤務し、同社の生命線ともなる数々のシステム特許をモノにしてきたスーパーIT エンジニア。 東京湾を軸にショアもオフショアもこなすベテランアングラー。毎年アオリイカ、メバル、カサゴなどを対象とした「野島沖堤防ライトゲーム教室」を開催して毎回参加定員をオーバーするほどの人気を博している。

そもそもなぜバックラッシュが起きるのか?

ベイトタックルのキャスティングで、ブレーキセッティングを強めにしているのにバックラッシュすることを不思議に感じたことはありませんか?

これは「硬くて直進性と比重の高いフロロカーボンライン」と比べ、「コシが無く柔らかくて直進性と比重の低いPEライン」を使用し、3〜10g程度の軽量ルアーを投げる際に特にその傾向を強く感じるはずです。

そもそもバックラッシュは「キャストしたルアーの速度をスプールの回転数が上回ること」により発生するトラブルです。このときルアー速度が低下する要因としては、「ルアー自体の空気抵抗」や「飛距離が伸びるにつれ放出量が増えるラインに掛かった物理負荷」などが挙げられます。つまり(当たり前ではありますが)、PEやフロロなどラインの種類や性質の違いも、ルアー速度の低下要因として大きく関わってくることになります。

したがってPEラインを利用する場合は、そのラインの特性に合わせ、かつルアーの速度低下率とスプールの回転数が一致するようにブレーキが効けば、バックラッシュも発生せず、飛距離も低下しないことになります。

バスフィッシング用の“ベイトフィネス機”とIR CTの違いとは?

バスフィッシング向けに開発され、軽量なリグを扱えるいわゆる“ベイトフィネス機”と呼ばれるリールが数多く登場しており、年々めざましい進化を続けています。しかしIR CTは、こうしたバス向けの“ベイトフィネス機”とは少し異なるコンセプトでスプールを開発しています。

そもそもバスフィッシングとライトソルトゲーム、その一番の違いは何でしょうか。それは、冒頭でも紹介したように、ライトソルトでは比較的軽いルアーとPEラインを使用して広い海へ向かって常に遠投する場面が多いということです。一方バスフィッシングではショートディスタンスでのキャストがメインとなり、使用するラインもフロロやナイロンなどのモノフィラメントが主流です。また、使用するルアーはノーシンカーリグなどのフィネス系の釣りであっても、ワームのみで5〜10g程度の重量があります。

こうしたバスフィッシングの特長に合わせた、モノフィラメントライン使用時の適切なブレーキ曲線(スプールの回転数とブレーキ力を軸とした)は、ブレーキが「回転数の二乗」に比例する遠心ブレーキや、低回転時ではブレーキが非常に弱くなる可変マグネットブレーキのブレーキ曲線に近くなります。しかしライトソルトにおいてはリグが非常に軽いために、PEラインの特性が速度低下に占める割合が大きくなります。またスプールの小径化と軽量化により、慣性質量が低下しかつ回転数が上昇することで、高速回転時のスプールの回転抵抗も大きく影響します。これらの要因から、バス用ベイトフィネスリールとPEを用いるライトソルト向けのリールでは、快適にリグをキャストするための「適切なブレーキ曲線」に大きな違いが出るのです。

先ほど「ブレーキセッティングを強めにしているのにバックラッシュすることを不思議に感じたことはありませんか?」と書きましたが、その大きな原因の一つがこの「適切なブレーキ曲線の違い」です。

十分に軽量なスプールを搭載したバス用のベイトフィネスリールにPEラインを巻いてさらに軽量化を図り、ブレーキを強めにセットしたとしても、想定より軽いルアーで遠投した場合にキャストが難しくなる理由がこれです。ブレーキの特性がマッチしていないため、キャスト直後はブレーキが強く効くのに、後半では突然バックラッシュが発生するなどのトラブルが頻繁に発生することになります。つまり「スプール全体が軽いだけ」ではだめで、より重要なのは「用途や使用条件にマッチしたブレーキセッティングが必要である」というわけです。

PE専用ブレーキセッティングの最適解を求めたIR CT

ライトソルト専用のベイトタックルが多く出てきた現在でも、ベイトリールユーザーの間では「スプールの重量」ばかりが話題にのぼり、ブレーキセッティングが注目されることはほとんどありませんでした。

モノフィラメント以上にバックラッシュしやすい特性を持つPEラインですが、現在のソルトゲームにおいて主流といってもいいラインである以上、PEラインに最適なブレーキ特性を持ったリールが実現できれば、ライトソルトにおけるベイトタックルの使い勝手や楽しさがもっと広がるのではないか…そういった想いのもと、INX.Labelの開発チームであるインクスラボでは、数年前からPE専用ブレーキセッティングの最適解を追求してきました。

当初、まずPEラインと軽量ルアーの使用を前提とし、フルキャストに必要なブレーキ曲線を各種条件から予想しました。そしてブレーキシステムの何を調整(チューン)すればブレーキ特性が変化するかを調べ、予想したブレーキ曲線に近づくように試作品を作製。実際にキャストして、各タイミングでのブレーキの強弱を確認しながらセッティングを詰めて行くことを3年ほど繰り返し、ついに期待通りの性能に辿り着きました。

DAIWA Technology & SLP WORKSとのコラボレーションで実現

インクスラボでの試作はこのブレーキチューンが最も向いているDAIWA製のリールで実施しました。同社のベイトリールはスプールの広い互換性が特長の一つですが、試作時において理想のブレーキ特性を再現するには、機種ごとに専用パーツを用意する必要があるなど、当初は様々な要因からあくまでも“プライベートチューン”でしか実現できないという状況でした。

しかしありがたいことに、DAIWA TechnologyとSLP WORKSの二社がこのブレーキチューンに理解を示してくださり、その大きな支援と協力によって、このPE専用ブレーキセッティングを施したスプール、そしてそれに合わせて高精度に最適化されたボディを持ったリールを、みなさまに “製品”としてお届けできることになったのです。

今回ライトソルト&ミドルゲーム専用リールとしてIR CTの製品化が実現できたのは、私たちにとってもまさに僥倖としか言いようがないほどの夢の実現でした。

IR CTをより快適に使うためのポイント

1:キャストに応じたブレーキ設定のコツ

ライトソルトに特化したIR CTのブレーキセッティングですが、調整でコツが必要な点が一つあります。

ピッチングキャスト、サイドキャスト、アンダーキャストなどを行う場合、オーバーキャスト(フルキャスト)時に快適なブレーキメモリより、1、2段階程度ブレーキを弱くした方が使いやすくなるように設定してあります。従来のマグフォース系のブレーキは、ブレーキ調整無しでキャストからピッチングまで対応可能ですが、IR CTは「フルキャスト」をメインとしたマシンですので、ショートキャスト時との2パターンでのセッティングを推奨します。

2:シャロースプールが軽いルアーに有利というわけでも無い

IR CTのラインキャパが0.8号100mと聞いて、「シャロースプール」でないことにがっかりした方も少なくないと思います。ラインを多く巻くと軽量ルアーが投げ難くなることは広く知られており、シャロースプールの方が軽量ルアーが投げやすいと思っている方が非常に多いのです。

しかし意外に知られていない事実として、スプールの円筒部分が細いノーマルスプールの方が実は重量が軽いのです。例えばスティーズCTのノーマルスプールとシャロースプールでは、シャロースプールの方が1g重くなっています(注:一部管釣り専用など用途を限定したシャロースプールの方が軽い場合もあります)

さらに、同じ長さのラインを巻く場合、糸巻き面の直径がノーマルスプールの方が小さくなるため、結果として軽量ルアー向きになります。

3:50%の糸巻き量でも快適にキャスト可能なブレーキ設定

ではノーマルスプールの方が軽量ルアーに必ず有利かと言えば、ブレーキを含めて考えると少し事情が変わります。

本来リールのブレーキはラインを100%巻いた状態で調整されています。しかしスプールに対してラインを50%しか巻かない場合、重量と糸巻き面の直径が小さくなるため、ブレーキ設定にズレが生じてキャストに影響が出ることはすでにお話ししたとおりです。しかしこれは言い換えれば、ノーマルスプールでもライン量を少なくした状態に合わせた最適なブレーキ設定をあらかじめ施しておけば、シャロースプールより慣性モーメントが小さくなり、結果的に軽量ルアーが投げやすくなるということなのです。

そこでIRCTではライトソルト及びミドルゲームでの実釣性を考慮し、より軽いルアーを投げるための0.8号50mでのブレーキセッティングと、100m巻いた場合のブレーキセッティングでのテストを綿密に繰り返し、50mと100mという2パターンのラインキャパによる簡易な使い分けにより、幅広いリグ重量において十分なブレーキ性能を発揮できるように作り上げました。

具体的には、糸巻き量50mで3~6g、100mでは5~10gが快適なルアーウエイトになります。本来キャストウエイトの幅が狭いベイトリールを、ラインの長さを調整することである程度広くしたわけです。また、巻き取り速度についても最初から考慮しており、50m巻いた状態ではハンドル1回転で75cm程度、100m巻いた状態では80cm程度になります。これはメバルプラッギングなどで主流のHGから、ミドルゲームで使いやすいXGの範囲までカバーしています。

 

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おわりに

IR CTのスプールは、これまでご説明したインクスラボのアイデアに加えて、DAIWA Technologyが蓄積しているPEラインのノウハウを詰め込んだ、完全に新設計のスプールです。また、DAIWA TechnologyとSLP WORKSによる専用ボディとスプールの組み合わせを最適化することでブレーキの微調整が可能となり、最適なブレーキ調整ができるようになっています。

3社のノウハウが詰まったIR CTは、きっと皆さんの期待に応えられるはずです。現在テストも全て完了して、【3月受注開始/5月出荷開始】を目標に、すでに量産工程に入っております。私も完成がとても楽しみですが、正式な発売開始のアナウンスが行われるまでもうしばらくお待ちください。

INX.label(INX.label)

何歳になっても、一匹の魚に心躍らせ、少年のころのように一喜一憂してしまう。 InxLabelは、釣りを生涯の友としたアングラー「加来 匠」と妥協を許さぬプロ集団であるインクスラボスタッフが「もっと楽しく、もっと知的に、もっと遊べ」をモットーに、こだわりのFishing Gearをプロデュースするアングラーによるアングラーのためのレーベル。