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今江克隆のルアーニュースクラブR「バス釣りの神様からの試練〜TOP50最終戦・遠賀川レポート〜」の巻 第1166回

連載:今江克隆のルアーニュースクラブR
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2023年TOP50シリーズ最終戦・遠賀川(エバーグリーンカップ)が閉幕した。

今期は、昨年の結果が31位繰り上げ残留ということもあり、万全の準備を整えて捲土重来を期していたが、予期せぬ出来事が多く、気力、体力的に著しく集中力を欠いてしまったシーズンだった。

初日にサイトフィッシングで大失敗した第2戦小野湖戦では、2日目最上流でのビッグフィッシュ大逆転に賭けたが…ほぼ最下位の結果に

第3戦霞ヶ浦戦では自信があったにもかかわらず、2日連続ノーフィッシュで2戦連続予選落ちの最下位。ただ一人のシニアシード選手である泉さんと昔話に華を咲かせたが、この時、初めて心が折れかけていた

その結果、第3戦が終了した時点でのランキングは、ほぼ最下位組…。

さらに今期はTOP50メンバー(50名)から参戦欠員2名が出たため、通常次年度残留圏30位の規定が28位となり、残す2戦を最悪でもシングル入賞しない限り、得点的にほぼ自力残留は絶望的となった。

過去の経験上、5試合中2度の41位以下(参加点のみ)となると、自力残留できるケースは経験的にほぼない。

最終戦での選手の心理状態

それゆえ年間上位争いとは別に、残留権争いも熾烈になる後半戦を迎えるにあたって、選手達の心理状態は二つに分かれる。

一つは残留の可能性が限りなく消滅した40位以下の選手が、せめて爪痕を残し、あわよくば大復活を賭けて無謀な勝負で優勝のみを狙う。

二つめは、30位前後の当落ボーダーラインにいる選手が、何とか後半2戦を手堅くハズさないように予選通過を最優先に考える。

だが、この二つの心理状態になった選手は、結局30位以下に沈むことの方が多い。

前者は、勝ち筋もない負けた理由づけのためのストロングスタイル。

後者は、予選落ちにビビって腰が引けた釣りで守り切れるほど守りの達人だらけのTOP50は甘くはないからだ。

残り2戦を迎えるにあたって、正直、自分の心理状態は前者だった。

永久シード権を持つ自分にとって、後者を考える必要は「本来」はない。

だが、真剣勝負においては、往々にしてその甘えが逆に最大の弱点となることも、また明らかな真理(心理)なのだ。

本当の底力、火事場の馬鹿力、異次元の扉の開錠は、死地でこそ恐れず、前に一歩踏み込む勇気のある者だけが手にできる「奇跡」なのだ。

永久シードを行使することで復活できても、それは魂のないアンデッドでしかないことを自分が一番分かっている。

2023年度TOP50シリーズが閉幕した。今期は2名の欠員が出たため、次年度残留資格は28位までとなった。選手全体が若くなり、デジタルデバイスのスキルが拮抗している現在、28位以内に残ることも容易ではない

31位で迎える最終戦

前戦、TOP50第4戦桧原湖で、苦手意識の強かったライブスコープ戦から逃げずにチャレンジしたことで表彰台獲得。

その結果、自分は31位で最終戦を迎えることとなった。

例年通り30位までなら予選通過で残れそうだが、28位が残留圏の今年は、15位以内の入賞でなければ自力残留は不可能だ。

一時は諦めていた自力残留だが、幸か不幸か絶妙なこの順位は、まるでバス釣りの神様が来季60歳を迎える自分の進退をこの最終戦で試しているようにすら感じた。

最も苦手意識のあったライブスコープ戦を克服するために必死で挑んだ桧原湖戦。この試合で表彰台に立てたことで、自分の中で再び最後まで諦めない気持ちが蘇った

再び、ライブスコープ戦に…

そして、最終戦。

一昨年の藤田京弥選手の圧倒的なライブスコープ戦略優勝で、目に見えるカバーが極めて少なく、沖の沈みモノが日本一多いともいえる遠賀川の試合の様相は一変した。

再びライブスコープ戦になると予想し、公式練習5日間は再びライブスコープの練習に費やした。

しかし、ほとんどといってもよいほど他のプロも同じ戦略を考えていた結果、最初の3日間、ライブスコープを使った自分の釣りでは、どれだけ精度高く撃っても巻いても全くといってよいほどバスが釣れなかった。

いや、正確には自分のライブスコープテクには決定的な弱点があった。それは、フィジカル問題だ。

フィジカル的問題

一点でボートを止め360度ローターでスコーピングする桧原湖とは違い、遠賀川は無数にある水中の小さな岩という岩、杭という杭を正確に細かく動きながら、そこに付いているバスを単体でスコーピングする必要がある。

しかも、午後からは毎日海からの北風で荒れる中で、イスより小さな岩や杭を常にスコープ圏内に外さず、サドルチェアも使わず片足だけで1日立ち続けてスコーピングし続けることは、腰や膝に大爆弾を抱える自分にはフィジカル的に限界があった。

事実、練習3日目の深夜に激しい太腿裏の痙攣に襲われ、このスタイルを8日間続けることは最悪棄権もあり得ると思われた。

公式練習ではライブスコープを駆使し、超精度で巻いても撃ってもバスを触れず、本来ルアーで釣れない魚の方がはるかに釣れた。特に「リグラー5.5インチ」では10㎏越えのコイが毎日のように釣れた

最後の最後は…

全く釣れないまま4日間が過ぎた公式練習最終日、最後の最後は自分の一番好きなスタイルでやってみようとスタイルを大きく変えた。

自分が公私ともに一番好きなスタイル、最上流、堰下、すなわちバックウォーターに似た状況でのスイムベイト・スタイルだ。

急激な寒波に見舞われ、霞ヶ浦の晩秋に似た激シブ状況だった今回の遠賀川。

霞ケ浦同様にボラがやたら多かったので、昨年、バサーオールスタークラシックで抜群の威力を発揮した「ジャバロン140」のボラカラー「イナッコ」を試してみることにした。

「まぁ、普通では釣れんわな…」と思ったため、「ジャバロン」をベイトタックルで使うのではなく、あえて桧原湖で超お気に入りになった三原(直之プロ)の「ライナースピン」に6lbフロロのノーシンカーで使ってみた。

使い方も、巻くのではなく、ほぼ泳がせない半ドリフトの転がせ釣りだ。

ガビガビに引っ掛かる堰下の岩瀬を、軽くスタックさせては軽いジャークでハズして、その反動で少しウネウネッと泳いでスーッとフォールしてくれる感じだ。

「ライナースピン」にした理由は、ものすごくスローに、ていねいに動かせて、流れの影響を受けにくくするためラインもギリギリまで細く、「ジャバロン」でもしっかりフッキングできるティップのヘビーさがほしかったからだ。

これは大昔、知る人ぞ知る自分が遠賀川で何度もお立ち台に立った、「テムジン・イレイザー」&「ファットイカ」のボトムスタックジャークパターンの応用である。

遠賀川で「ジャバロン」が釣れると現地スタッフからも聞いたことがなかったので、逆に効くかも?程度だったのだが…。

桧原湖戦から超お気に入りの「ライナースピン」。超スローでていねいにドリフトするために、あえて「ジャバロン140」をハードスピニングで使った。「ステルススイマー」まで使えるという謳い文句は伊達ではない

どうせ死ぬならココだ!

いつも思うが、本当にバス釣りとは「キッカケ」、「気付き」の釣りだと思う。

なんと一投目から答えがでた。

そして数投後には、痩せてはいたが50cmUPまで釣れてしまった。

もうこれしかない、桧原湖で自信を持ったライブスコープ戦略を全て捨て去り、ルアーパワー、大好きなスポット、そして自分の大好きなスタイルを信じて、どうせ死ぬならココだ!と晩秋の最上流ジャバロン・ドリフトをやり抜く決意をした。

ボラがやたら多かった今回の遠賀川。霞ヶ浦で効いた「イナッコ」カラーの「ジャバロン」をボトムスタックジャークで使うと、答えがすぐに帰ってきた。そして、まさかの50cmUPまで釣れた

いよいよ最終戦へ!

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