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今江克隆のルアーニュースクラブR「革新的構造でシャッドプラグの限界を突破!『IxI Furious』最新形態と特徴を公開」の巻 第1134回

連載:今江克隆のルアーニュースクラブR
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幻の「IxI TYPE-2(T-2)」、そのコンセプトは?

2017年に始まったメガバス伊東由樹氏との「IxIシャッド」の共同開発。

2018年にデビューした「TYPE-R」、「TYPE-3」、2021年の「TX」まで、はや6年目を迎えた。

その間、最も多くのプロトタイプを試作しながら、未だに完成に至らなかった機種が存在する。

それが幻の「TYPE-2(T-2)」だ。

この「T-2」が6年間もの間、幻の存在だった理由は、そのコンセプトの難しさにあった。

自分がこの「T-2」に求めた特化性能は「爆飛・爆浅・爆速・爆直」、すなわちどのルアーより真っすぐ飛んで、爆速で巻いても、爆浅をキープし、ボトムに当たってもひたすら直線軌道を乱さない直進性だった。

一見簡単そうに思えるこの4大基本性能は、リップを持つプラグ、特にクランクとミノーの間にある形状的に泳ぎの不安定要素が高いシャッドタイプにおいて、最も実現が難しい性能といわれるものだ。

最も多くのプロトタイプが試作さてれはボツになった「T-2」こと「Furious」。釣れそうなカタチは多々あったが、求めたのはあくまで「爆飛・爆速・爆浅・爆直」のシンプルにして最難関の究極性能だった

自分の経験的にミノープラグのように細身でリップを小さくし、巻き感、抵抗感をなくしたモノや、直進性を優先するためにロール&ウォブルパワーを小さく細かくしたモノなら存在するが、この4つの性能を同時実現した完璧なシャッドプラグは未だ存在しないと思っていた。

特に「爆浅」性能は、リップ付プラグが逆アーチ状軌道で潜る以上、現実的に50㎝以内をキープすることは最も難易度が高いと思っていた。

それを「T-2」のメインコンセプトにしたのだから、「幻」だったわけである。

シャイナー形状へ

結果的に「T-2」は、6年のうちに度重なる変遷を経て、2021年には明確な巻き感を維持するための基盤リップ化、爆浅爆直を維持するためにグラマラスなシャイナー形状に移行した。

だが、水押しの弱さを補うために独特のボディハンプを持たせたシャイナー形状も、「巻き感、振動の弱さ」は解消せず、それを解消するためにリップを大きくしたり、角度をつけたりすると「爆速・爆浅・爆直」のコンセプトとは程遠くなった。

「爆浅・爆速・爆直」を実現させるために細身のシャイナー形状になった「T-2 Furious」の前身。だが、巻き感が致命的に弱く、飛距離も出なかった

そして2022年にたどり着いた「T-2」の形状は、皮肉にもイマカツが誇る激浅攻略用シャッド「ゲキアサシャッド」と同じような形状、リップ構造になってしまうことになる。

それだけこの事実は、逆に「ゲキアサシャッド」がその人気の高さが示す通り、極めて完成されたシャッドであることを証明する結果になった。

爆飛びの「MLBO」構造を除けば、「ゲキアサ」とほぼ同性能、これはこれで完璧なシャッドではあったが、「これではIxIとして世に出せませんね……」と、当然の帰結で「T-2」はまた振り出しに戻ることになりかけた。

「爆速、爆浅、爆直」を突き詰めていく過程で、結局、「Furious」は「ゲキアサシャッド」と同じ場所にだどり着くことになる。同じモノを世に出しても「IxI」ではないと、諦めかけた時に偶然のキッカケで異次元の扉が開いた

「POP-X」みたいに??

しかし、ここでまた頓挫することに少し苛立ちを感じた自分が「せっかくだから、コイツにメガバスらしさを出すために『POP-X』みたいに頭とエラにでも穴でも開けてみてください(笑)」と伊東氏にリクエストを出した。

正直、「ゲキアサシャッド」とのデザイン面での差をつけるためだけのギミックに過ぎないリクエストだったが、この「T-2」を再びボツにするのが、それだけ忍びなかったからだ。

この時、自分の脳裏には「POP-X」の、メガバスが持つ日本特許であるエラの排水ダクト構造と同時に40年ほど前に流行ったあるプラグのことがよぎっていた。

それが「トラブルシューター」「リトルアンダーテイカー」という名の「穴だらけ」のオールドプラグ達だった。

40年ほど前に実際に使っていた元祖穴あきルアー「トラブルシューター」。穴を通る水流で超音波?を発生させると謳われており、少年・今江克隆は本気で信じていた……。今やB級オールドルアーだが、発想の突飛さだけは、さすが!アメリカンルアー

正直に告白すると、これらの「ウォーターダクト」を持つプラグの売り文句だった、「NASAが開発に加わった???超音波発生機構」、「バスが話す言葉を水流音波で実現」といった、今ではお笑いのギミックを「T-2」に付け加えたら、少しは「ゲキアサシャッド」と差別化になるかな? 程度の苦肉の提案だった。

同時に「ウォーターダクト」の特許を取得しているメガバスだからこそできるオリジナルデザインでもあったからだ。

だが、それが「T-2」にとって何か劇的な実戦効果を発揮するとはほとんど思っていなかった。

むしろこれらの穴だらけオールドプラグは、リップの付け根の穴からボディ各所の穴へと水が通ることによって動きのキレが普通のクランクより悪くなるだけで、すぐに歴史の中に消え去ったB級ルアーだからだ。

案の定、この提案から数カ月、伊東氏からの連絡は途絶えた。

「バスが理解する言語を話すルアー」、「NASAが分析に加わった」との謎過ぎる英文解説が付いたアクアソニック社の「リトルアンダーテイカー」。大穴がリップ付け根と尾部に開いていたが、まるでホイッスル(笛)をイメージさせる奇天烈B級超音波発生ルアーだった。「リルアンダーチェイカー」と発音で名前を間違えて書いていた当時の雑誌記事が面白い

久々に伊東由樹氏から手紙とサンプルが届く

自分自身、このリクエストは動きが改悪になっても改善にはならないだろうこと、同時にSNS好きアングラーから穴が開いているだけで安易に「トラブルシューターのパクリ」と揶揄されることは目に見えていた。

正直、「T-2」の再度の頓挫に落胆し、ドン詰まりになった最後の悪あがきで、特許を持つ伊東氏ならどうするかな?とちょっと興味本位の意地悪な提案だった。

そして、それをリクエストしたことすら忘れかけていた12月、久々に伊東氏から手紙とサンプルが届いた。

その手紙にはIxI史上、今までにないほどアツく興奮し、そして自信にあふれた伊東氏の様子が手に取るように伝わってくる長文だった。

「爆速・爆浅・爆直」を実現する革新的構造

そのプロトルアーを見た瞬間、自分の意地悪なウォータースルー構造のリクエストをこの数カ月、真剣に本気で考え続けていた氏の、ビルダーとしての執念に近い意地とプライドを見た気がした。

それでも正直なところ、初めてそのプロトを見た時は、うまくできているがやはり「トラブルシューター」同様、「ギミック」の域を出ないのではないか?と疑っていた。

だが、12月末、初めて実戦投入された新型「T-2」は、シャッドプラグに関する機構や工夫は既にやりつくされ終点に到達していると思っていた自分の頭を、スレッジハンマーでぶん殴られたような衝撃を受けることになった。

伊東氏が手紙で興奮を隠しきれなかったのも当然のことで、シャッドプラグの性能に関してこれだけの驚きを感じたのは、「スーパースレッジ」を開発した時以来だった。

もはやそれは「トラブルシューター」や、「リトルアンダーテイカー」のような曖昧で謎すぎる超音波ギミックではなく、完全に本物の「バーチャルリップ(伊東氏語録より)」と言っても過言ではない実戦能力だった。

それは大昔のルアーとは全く違ったベクトルで考えられた実戦効果、すなわち「爆速・爆浅・爆直」を実現する革新的構造だった。

前頭部に巨大な穴が開いた「IxI “The Furious”」。その穴には理にかなった革新的性能が備わっている

シャッドプラグの限界を突破した革新的構造を公開!

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