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今江克隆のルアーニュースクラブR「バスプロ人生最終幕の始まり!」の巻 第1119回

連載:今江克隆のルアーニュースクラブR
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悩みを初めて明かすと……

ここで、ナゼ、自分が2018年のシード権行使に関してあれほど悩んだか……その理由を初めて明かそう。

TOP50シリーズ(旧称:JBワールドシリーズ)には、そのカテゴリー創設以来、様々シードがあった。

基本的にシード権はルールに選出定義はなく、JB会長と副会長の選出で決定承認される。

当時のシード選手は、大手スポンサー関係の選手だったり、影響力のあるメディア人気選手であったり、その選出理由は様々で試合を華やかに魅せる選手が選ばれ、試合成績は二の次だった。

そのため当時は「永久」ではなく「A級」シードや、意味不明なB級シードなど、様々なシード選手が10数名もいることがあった。

そして中には落ちないシードゆえに、さほど練習もしない選手や毎年30位以下の選手もいた。

同じシード選手として当時成績とタイトルで突出していた自分は、そのシード選出の基準と価値の曖昧さに大きな不満があった。

だからこそ、自分はシードを使わずに実力で残留することにこだわり続けた。

結果、若い世代が台頭するにつれ、シード選出に関する不満が出てきたこと、10名も落ちないシード選手がいることで昇格できない若手が多いことで、A級、B級シードは2017年に全撤廃が発表され、60歳以上の「シニアシード」として下野(正希)プロ、泉(和摩)プロが再認定された。

そして自分はこの年、初めてJB史上ただ一人の「永久シード権」を獲得し、表彰されることとなった。

その選出理由は、JBトップカテゴリー全タイトル複数回獲得、トップカテゴリー最多勝、TOP50最多勝、30年以上のトップカテゴリー参戦歴、組織強化委員長としてのトーナメント発展への寄与。

さらにTOP50(旧ワールド)シリーズ開催地交渉担当、JBローカルシリーズスポンサー協賛等、各方面への貢献度を評されての選出だった。

「永久シード権」は、獲得タイトル数や勝利数だけでは獲得することはできない。

それゆえにこの2018年に獲得した「永久シード権」は、JB創設以来39年間、JB生粋の生え抜きのトーナメンターとして生きてきた自分の誇りであり、「最高で最強のタイトル」でもあるのだ。

2017年、最高10数名もいた「A級シード」、「B級シード」が廃止され、JB史上初めて、たった一人だけの「永久シード権」を獲得することができた。だが、その価値が重すぎるがゆえに、受賞は同時に苦悩のはじまりでもあった……

だからこそ60歳を目前にし、その最強のタイトルを来期以降「最強の武器」として堂々と行使することを決意できる気持ちにようやく至った。

年間31位という屈辱の順位は、自分の悩みを吹っ切れさせるために、あえてバスフィッシングの神様が与えた順位だったかもしれない。

バスプロ人生最終幕

加齢による、あらゆる肉体的、メンタル的パフォーマンスの衰えは避けられず、若い連中と互角に渡り合うには、もはや自分には武器がない。

過去の経験は、今のトーナメント過剰なマンネリレイクでは、もはや邪魔にしかならない。

どんなに地形や沈みモノを時間と経験の積み重ねから知っていても、今や広大な霞ヶ浦ですら電子デバイスの発達で30年の知識さえも半年あれば誰でも調べ尽くせるし、記録も簡単にできる。

ワンセット160万円もする最高級ライブスコープ複数台で、一目で半径25m以内にバスがいるかいないか、いれば位置から数、動きまでを直接見て、ルアーへの反応まで見ながら喰わせる今の時代には”パターンフィッシング”や、バスを見つける”野生の勘”的なモノの必要度は低い。

美しい山や森の木々を見ることもなく、ただひたすら首を下げ、モニターだけをガン見しながら竿をシャクる姿は、もはや自分の憧れたバスフィッシングではない。

だが、それを全否定して傑出した結果を残せる選手を今の時代、自分は知らない。それが現実だ。

この美しい風景を見ずに、モニターばかりを見つめるスタイ ルは、自分の憧れたバスフィッシングではない……。だが、それは時代についていけない言い訳に過ぎない

自分に勝てる可能性がまだ残されているとすれば、何も恐れず徹頭徹尾、攻めだけに全力を投じるしか、勝ち筋はないだろう。

それを可能とさせてくれる唯一の武器が、自分の経験と実績で手に入れた「永久シード権」であるならば、残された短いトーナメントプロ人生で全てを使い切る覚悟である。

「永久シード」は、自分が獲得したJB史上唯一にして最高最強のタイトルなのかもしれない

もう今後は、残留権の30位にこだわる意味はもはや今の自分にはない。

年間30位以内の平凡な成績など結局、誰の記憶にも残らない。

線香花火の最後の輝きのように、ド派手なバスプロ人生最終幕の始まりだ。

来期59歳となる自分のフィジカル的メンタル的衰えは、もはや隠せない。もう一度勝つために自分だけが使える最後の武器を使う時がきた

もう恐れるもの、失うものはなくなった今、TOP50最高齢選手となるであろう来季から2年間、自分の最後の目標として永遠のライバル沢村(幸弘)プロが保持するJBTOPカテゴリー最高齢優勝(59歳)の更新、そしてTOP50最多勝の上積みを最優先にする。

ただ、若い選手達の老害にはなりたくないので60歳を超えてからは後進の育成も含め、「強い60代」として毎年30位以内残留を目標に、JB最高齢最強プロとして、その名を刻めるよう頑張りたいと思います。

自分が頂点に返り咲くために必要なことは、死地に活路を求める覚悟なのだろう。もう失うものも、恐れるものもなくなった今、また新たな挑戦が始まる

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