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ロッド開発を続けて20年…ロッド開発者のつぶやき~その1

連載:トモ清水「ガッ釣りソルト」

隔週連載「トモ清水のガッ釣りソルト」
第142回『ロッド開発者のつぶやき~その1』

こんにちは、トモ清水です。気が付くとすっかり日が長くなり、一年で最も日が長い夏至が近づいています。関西の一部でいち早く梅雨入りが発表され、関東ではこの原稿を書いている昨日、梅雨入りしたとみられる、と梅雨入り宣言が発表されました。
これから梅雨前線がハッキリとした本格的な梅雨に入っていきますね。
ただ、この原稿を書いている本日は真夏日を思わせる天候。

最近、毎日欠かさず実施している朝のウォーキングでは、今年初のセミの鳴き声と、ノコギリクワガタを発見。「梅雨入りしたのではなかったの?」と思いつつ、明日からは曇りか、傘マークの天候が続くようです。

トモ清水(Shimizu Tomo) プロフィール

PFJ(ピュア・フィッシング・ジャパン)であらゆる魚種のAbu Garciaロッド製品開発を担当するスーパーマルチアングラー。ホームは、関東外房(フィールドテストで全国行脚するため、大阪、広島、九州、北陸すべてセカンドホームグラウンド)。趣味はサーフィン、スノーボード、キャンプと多趣味だが、釣りがダントツ。1977年9月生まれ。本名は清水智一(しみず・ともかず)

開発者の本音トークをぶっちゃける!?

さて前回もお伝えしましたが、緊急事態宣言下で仕事以外の釣行は極力控えていて、リアルタイムのネタ、情報があまり無いのが正直なところです。

というわけで今回は、ちょっと普段、あまり記事にしないロッド開発者、設計者ならではの目線で、裏話や本音トーク、つぶやきを発信していきたいと思っています。
結構とりとめもない話になるところもありますので、気軽に読んでいただけたら幸いです。

 

ロッド開発の仕事とは?

まずロッド開発と一言でいっても、いろいろな種類があります。

「こんなロッドがあったら」「これを作ったら売れる」と企画する商品企画の仕事。
「パターン設計」「マンドレルテーパー設計」など設計と呼ばれる設計を専門とする設計者。
さらに「鮎竿」「へら竿」「ルアー竿」と各ジャンルに特化した設計者もいます。
また「ロゴデザイン」「メタルパーツ」「カラーデザイン」などロッドのデザインをメインとする仕事もあります。
素管(ブランクス)だけを、ほかから手に入れて、塗装、ガイド、グリップなどの後工程(アッセンブリ)を行ってロッドを作る、いわゆるロッドビルダーという仕事もあります。

釣り人なら誰しもが自分だけの釣竿を作ってみたい、デザインしてみたい、カスタムしてみたい、と一度でも思ったことがあるのではないでしょうか!?

またロッド開発者(ロッドビルダー)として、将来趣味を仕事として頑張りたい、目指したい、という方も多くいることでしょう。

ちなみに私は、それら全て一貫して全て出来るスキルを必要とされているので、非常にやりがいを感じ、プロとして仕事をこなしています。

わたくしトモ清水のYou tube動画や釣り番組を見て頂いている方から、「テスターやメディアに出るアングラーでしょ」と思われている方も多くいらっしゃいますが、本業はロッド開発です(笑)。

釣り人は十人十色、釣りは趣味の世界で、答えは1つだけでありません。非常に多様化しています。

特にリールと違って釣竿(ロッド)は、本当に好みが分かれるところで、長さや調子、グリップ形状、デザインなど自分にピッタリな釣竿を見つけられた方はラッキーでしょう。
またターゲット魚種毎に細分化されていますので、迷ってしまうほど実に様々な釣竿であふれています。

ロッド開発歴20年のメリット

わたくしトモ清水は高校生の時に、「将来は一番好きな釣りを仕事とし、豊かな人生を送りたい」と心に決めて、今ではその夢を実現し、ロッド開発者として約20年間、仕事をしてきました。

以前の会社の先輩からは「10年でようやくロッド設計者として一人前になれる」と教わり、がむしゃらに頑張ってきましたが、20年経った今でも新しい発見や勉強することが多く、「まだまだ一人前にはほど遠いのでは」と感じるところです。

しかし20年もやっているとメリットとしては、経験値も豊富になり、ロッドの設計図は頭にインプットされています。

これまでに私はOEMだけでも10社以上、実に多くのブランドメーカーのロッド開発に携わってきました。ここまで多くの会社のロッドを手掛けてきた開発者も珍しいのでは?

まぁ残念ながらOEMとは秘密保持契約というのがあり、詳細は話すことが出来ません。

しかし一方ではデメリットもあります。それはのちほど。

国内にはロッド設計者、という専門の人は実はそれほど多くいません。かなり特殊な仕事と言ってもよいでしょう。

それゆえ、1つのブランドのロッド企画、開発をするだけでなく、中には私のように多くの会社のロッド開発に携わる方もいます。
ロッドに使用されるカーボンプリプレグやグラスファーバー、チタンやアラミド、4軸カーボンやボロン、材料の種類だけでも何万通り。釣竿の元となる素管(ブランクス)を設計出来る開発者は、この何万通りの材料から選択し料理し、それぞれのロッドに合った設計で竿を作るわけです。

東レさんのサポートでさらなる素管の研究を行うことができた

以前、炭素繊維メーカー世界最大手の東レさんからカーボンプリプレグに関するサポートがあり、非常に高価なカーボンプリプレグを無償で提供して頂き、さらなる素管の研究(強度、曲がり不良、生産技術など)が出来ました。

仮説→膨大な試験で導き出される最適解

当時、仮説を立て、あらゆるパターン設計をし、実際にプリプレグを裁断しては巻き付け、そして焼成炉で焼き、そして破壊強度試験の繰り返し。これを何千本という単位でデータを集め分析。そこから導き出された最適解。

それはロッド強度が格段に改善するパターンだったり、素管の曲がり不良率を減らせるパターンだったり、スパインレスと呼ばれる素管の断面が真円に限りなく近いパターンだったりと。そこで使用する材料、パターン構成、マンドレルテーパーなど、全ての要素で理想とするブランクスを、設計者の腕ひとつで物理的に可能である、という確信を得られることに成功しました。

「何百本、何千本と巻いては折ってはデータ取り」を繰り返しました

「何百本、何千本と巻いては折ってはデータ取り」を繰り返したことによって、いやがおうにも自分の頭にインプットされていきました。これは財産でもあり貴重な体験です。当時、サポートしてくれた東レの担当者には感謝しかありません。

今も東レさんの企業努力によってT1100GやM40Xといった宇宙産業や航空産業でしか使用されない高価で貴重な新素材のカーボンが開発、供給されています。

 

ロッド開発歴20年のデメリット

経験・知識が豊富がゆえに固定観念がついてしまう傾向が…

続いて経験が長いほど発生しがちなデメリットについて。

釣り業界に長くいればいるほど、もしくは開発歴が長ければ長いほど、頭がガチガチに固くなり過ぎてしまうこと。これが最大のデメリットかもしれません。どんな業種でも経験と知識が豊富がゆえ、ある種の固定観念がついてしまう傾向があるということ。

メーカー側が考える打ち手(ニーズ、訴求点、プロモーション方法など)と消費者の購買動機、ニーズが大きくずれている事実。

こういった事が発生しうる、ということをしっかり再確認しなければなりません。要するにプロダクトアウト過ぎる製品がゆえに、思っている以上に売れない、何かズレている、消費者はそんなこと求めていない、などという現象が発生します。

20年間の中で大きな変化を私自身、そして釣り業界的にも経験

ロッド開発者としてこの20年間、時代の流れが大きく変わる変化を私なりにも、釣り業界的にも経験してきました。

まずは2000年前半、釣りブームの収束による業界マーケットシェア3番手、4番手にあたる大手リョービ、マミヤOPが釣り部門を撤退。

2004年には外来種規制を定めた初の国内法「特定外来生物法」が国会で成立。

2011年、世界にも衝撃を与えた東日本大震災。そして2021年、まさにコロナ禍の真っ只中。

こういった時代背景、流れの中で人々の価値観、スタイル、生活様式さえも急激なスピードで変化し続けてます。「組織レジリエンス」という言葉が最近注目されるように、その時代の変化にしっかりと対応、適応できる能力を求められます。

頭をスポンジのように何でも吸収できる力を、常に顧客から学び、機能的なニーズと満足がいずこにあるかを模索し続けることが、開発者、企画者として最も重要な部分として、さらなる高みを目指していきたいところです。

 

ロッド開発者として、最も尊敬すべき人は?

竹やグラス素材しかなかった時代に突如現れたカーボン素材。これを始めに使用し、釣竿として完成させていった先人たち。当時はパソコンもない時代。手書きで紙にパターン図や金属パーツの設計図を鉛筆で描いていきました。

パターン図を書く際に必要なカーボンプリプレグのカット寸法も、カーボンプリプレグの厚さとプライ数、マンドレルテーパーから手計算で計算し作っていかなければなりません。

現在では、ロッド設計はシステム化されており、数値を入力すれば自動的に全てを計算してくれるソフトを採用しているメーカーがほとんどかと思われます。

そういった意味でも、先人たちは試行錯誤を繰り返し、カーボンロッドの基礎を築き上げてきました。何十年という蓄積された手書きの設計図から学べることは非常に多くあります。

先人たちは偉大です。
ロッド開発者としてポリシー

独自性と価値観の創出。真似されることはあっても、決して真似をしない新しいマーケットの開拓を目指し、感動という宝物を創出できる「ものづくり」を目指すことをポリシーとして今後も頑張っていきます!

また機会がありましたら、ロッド開発に関することをつぶやいて記事にしていこうかと思います。最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。

トモ清水でした!
See you next time!

 

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