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今江克隆のルアーニュースクラブR「2戦連続バスを一尾もウェイインできない……TOP50第3戦霞ヶ浦戦レポート」の巻 第1155回

連載:今江克隆のルアーニュースクラブR
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TOP50第3戦霞ヶ浦全域戦が、閉幕した。

自分の成績は、初日ゼロ、2日目もゼロ、バスと思われるバイト自体も完全にゼロ……完全試合達成で予選落ちとなった。

これで第2戦小野湖の00完全試合に続き、2戦連続バスを一尾もウェイインできないという、過去記憶のない結果に終わった……。

出典:JB/NBC Official site

「言い訳」をする理由

いつもの自分は、こういう結果になった時、必ず「言い訳」を見つけようとしてきた。

自分にとって「言い訳」とは、負け惜しみやタラレバではなく、みっともないことを承知のうえで、言い訳を公に書き残すことで「まだ自分はやれる」と、自分に言い聞かせ、切れかかった気持ちを何とか次へと繋げるための、諦めないための「劇薬」のようなものなのだ。

スポーツには、一切言い訳をしないことが勝負の美学という見方は間違いなくあるが、それは力のピークにあるTOPに立つ強者の美学であり、その他大勢の中堅~弱者には、美学にすらならないと自分は思っている。

現実として、その他大勢の一人となった今、もし自分が言い訳もせず、負けを完全に受け入れ、何も語らなくなった時は、もうその場所に残りたい気持ちもないということだろう。

だが、確実に手にできる可能性が高かったビッグフィッシュ2尾をミスしたことによって崩壊した小野湖戦とは違い、今回の霞ヶ浦水系戦の試合内容には何もなさ過ぎて、未来へと気持ちを繋げられるような言い訳すら、未だ見つけられない……。

一番問題なのは、今試合、当日の朝までは高確率で上位を狙える、すなわち見えていると自分では思い込んでいたことだろう。

それほど公式練習、特に2日前の直前練習では、リミットメイクもできるかもしれない手応えを感じていたからだ。

では、本番で状況、天候が激変したのか? 確かに変化はした。だが、それは同じ激変でも「好転」といえるもので、晴天気温36度越えの危険な酷暑が公式練習中変化なくずっと続いていたが、試合初日に初めて曇天の涼しい小雨となった。

水位、風向きも変わっておらず、32度もあった水温は28度まで下がり、確かに状況は「変わった」。

しかし、自分の「経験則」に従えば、この変化は自分のパターンが「願ってもない最高の状況」にハマる展開だと確信し、逆に朝の期待感はハンパなかった。

だが、落とし穴はそこにあった……。

霞ヶ浦水系だけは違った

これが琵琶湖なら、他のレイクなら、間違いなく自分の「経験則」は間違ってはいなかったと、今も思う。

だが、ここ霞ヶ浦水系だけは「違った」のだ。

今回の晴天酷暑時に見つけていたパターンとスポットは、かなりレアパターンだった。

練習序盤は、霞ヶ浦本湖で定番のシェード絡みのエビパターンで、「スキップドック」が好調に効いた。

だが、このパターンに関しては誰もが意識するほど事前評判が高かったうえ、良いカバーには入れ代わり立ち代わりTOP50プロが入ってくるのが確認でき、よほどタイミングよく入れるか、もしくはプレッシャーのないシークレットカバーを複数見つけないことには、3日間はとてももたないように思えた。

おそらくTOP50プロ全員がメインにしていたであろうイモ系グラブのカバーの釣り。練習序盤はメインになるかと思えたが、バッティングの激しさから日に日に厳しくなった

昨年の同船でこのテの釣りを体感し、「スキップドッグ」をデザインしたWBS大藪厳太郎プロ。今回の同船では「スキップドッグ」&「グラビアスKTF」の組合せで、驚くほどスキッピングがうまくなっていた

そこで、練習後半に自分が見つけたパターンは「淡水サヨリ」を喰っている回遊性の高い大型バスを釣る方法だった。

このサヨリパターンは、サヨリがいる場所も少なく、狙う場所もルアーの通し方にもキモがあり、今試合ある意味、誰とも一度もエリアもルアーもバッティングすることのない、唯我独尊パターンだった。

だが、ハマれば2本で3kg越えは十二分に狙えるビッグパターンで、自分のスタイルに最も合っていたことで、このパターンを選んだ。

ひと言でいえば、誰もがもうないと完全にノーマークだった沖の特殊な浚渫である。

ただ、普通には最悪に厳しい状況である「酷暑晴天微風」でナゼか好調だったこのパターンが、大爆発してもおかしくない「曇天小雨微風」で全く機能しなくなったことが、最大の誤算だった。

風向きも、流れも変わってはいないのに……。

気温36度超え晴天微風の真夏にシャッドの表層パターン。普通は時期的にまずない釣り方だが、公式練習後半にサヨリパターンに気付いてからはリミットメイクすら可能か……と思わせた釣りだった

最高のコンディションのはずが……

2日間やり切って分かったことは、酷暑後の曇天小雨微風の最高のコンディションは、バス以上にボラ、ナマズ、シーバスの活性を異常なまでに上げてしまう事実だった。

自分が絞り込んでいたスポットは、朝からナブラが立つほど生命感に溢れ返っていたが、晴天時には大人しかった巨大ナマズ、巨大シーバスの猛烈なボイルに、バスが怯えてしまってそのスポットに寄りつくことすらできない酒池肉林状態となっていた。

巻きモノにベストコンディションと思われた試合初日の天候は、逆にシーバスの活性を極端にあげてしまった。ある意味、ナマズよりさらに失望させられる魚だ

実際、酷暑晴天の練習中に1尾も釣れなかった大ナマズやシーバスが連発し、毎回、毎回ルアーのフックを全て壊され、メンタルも壊されてしまう状況だった。

ナマズがヒットするとプラグのフックは全て曲がってしまう……。準備したプラグがあっという間に使用不能にさせられてしまい、メンタルは劣悪になる

使ったルアーは、2日間ほぼ9割、「ISワスプ55」、「IxI FURIOUS」の0.5と1.5のみである。

今回の霞ヶ浦水系戦では、このボックス1段目のルアー以外、ほぼ投げなかった。ルアーを絞り、全時間をつぎ込んでタイミングを変えて何度も何度も巻きマクる戦略。2日間でガソリン200L以上を消費し、ノーバイト……

今試合2日間では、ロッドはグラスの「トルクマスター」とFACTのグラスコンポジットロッド66(HFAC-66ML)の2本しか、ほぼ投げていない。誰もやっていない沖サヨリパターンでサプライズを起こしたかったが……

鬼門

自分にとってTOP50霞ヶ浦水系は鬼門である。

昨年9月の試合でも00を記録し予選落ち、今年も00で予選落ち。

共通するのは、自分らしく独創的なパターンを見つけている時ほど00に終わっていることだ。

ボトムを切って巻いていてもナマズがモンドリングしてくる状況。今の霞ヶ浦では、巻きモノは晴天の方がナマズやシーバスが低活性になり、バスの確率が高いことを痛感させられた

過去には幾度も表彰台を獲得しているし、北浦水系に関しては優勝も含め琵琶湖に匹敵する勝率を残した水系でもある。

予選落ちした決勝の会場で、今回、たまたまTOP50最年長プロであり、現在シニア特別シード権をもつ泉和摩プロと長々と話をする機会があった。

泉和摩プロといえば海外チャレンジの草分けであり「HMKL(ハンクル)」の名匠で知られるが、今江的には氏はTOP50きっての釣りの核心を突いた「名言」、「金言」(本人は意識してないそうですけど……)を残しているプロでもある。

「エサより釣りたい」は、その代表的名言の一つだが、今回、泉プロと話して、自分のここ数年の霞水系の大敗の理由が分かった気がした。

いや、分かっていたが、それを納得させて言い聞かせてくれる存在が自分にはいないがゆえに、泉プロの一言は目からウロコが落ちる、自分への「金言」となった。

TOP50最高齢の泉和摩プロの名言金言を聞けたのが、今試合唯一の収穫だった。ハンドメイド「HMKL」の永遠の謎を突っ込めたのも、大収穫だったが(笑)

泉和摩プロの金言

今回の泉和摩プロのNEW金言、それは「バスフィッシングに経験はいらないよね、ムフフフフ-ン…」である。

「今江クン(ベテランの意味も含む)はね、経験(成功体験)が多すぎるんだよ、だから釣れないとどうしてもその経験を辿ろうとする。それって過去であって、今じゃないよね。今の若い子たちはそんな長い経験ないから、釣れないのが当たり前で、そんな霞ヶ浦で知らない場所に初めて行ってもフレッシュな感覚で釣りができるんだよ」。

当然だ。

自分の成功体験は自分だけのものと思いがちだが、常に試合にメディアを同伴させ、全てを公開してきた自分の成功体験は、今の若者たちに全てトレースされ、学ばれ、釣り切られた場所であり、パターンなのだ。

だが、自分の中だけではその成功体験は、ずっと鮮やかに記憶に残ってしまう。

窮地に陥った時、ほぼ全域を過去にチェックした経験を持ち、その過去の実績を無視して今まで一度も釣ったことのないスポットに本番中に行くことは、無謀にしか思えないからだ。

経験が判断を狂わせるなら、経験がないほど、逆に先入観なく今を釣ることができるということだ。

逆に、もしTOP50の開催会場が毎年全て違う湖だったら、毎年変化するウィードレイクだったら、様々な経験を持つプロが有利になったとは思う。

もはや霞ヶ浦ですら40年のキャリアを持つ自分は、地元プロの大藪厳太郎プロと変わらない知識量と経験量を持ってしまっている。

ゆえに2人での練習時には「自分たちでなくても普通にできる釣り、場所」では、SNS掲載用のバスを釣る程度のチェックしかしない。

どんなに北利根川がリリースフィッシュが多く、確実にバスを釣るには手堅い場所と分かっていても、そこを丸1日ていねいにアシ撃ちをしたり、オカッパリに交じって水門&チョコレート護岸ライトリグはやりきれない。

いや本気になってやる気になれないのだ。

その理由が「自分でなくても、この釣り、この場所なら誰でも普通に分かるし、普通に同じことができるじゃん……」と、まず思ってしまうからだ。

それがはたして自分の求める高度なプロの釣りなのかと思うと、「いや違うだろ、コレ……」と、少しでも思ってしまった時点で、そう思わない“釣り人気質”のボートアングラー、制限があるがゆえに真剣なオカッパリアングラーに簡単に釣り負けてしまう。

知識量がハンパない大藪厳太郎プロと同船した練習では、2人ともプロらしい釣りにこだわる性格もあって、毎回練習では驚異的なレアパターンに遭遇する。

それを見つけた時の感動こそが、トーナメントを続ける最大の動機であり、それを試合で結果として残し、釣り業界を震撼させたい、そういう想いが、今の時代には手枷足枷にしかならないのかもしれない。

誰もが知っている当たり前すぎるほど当たり前な場所で、誰でもできる地道で確実な釣り、それが今の霞ヶ浦水系で確実にバスを手にする絶対条件かもしれない。だが、それを貫徹できるTOP50プロは逆に少ない

ルアーアングラーとしての矜持

泉和摩プロがこんなこともいっていた。

「今は、バスが釣りたいじゃなくて、”このルアーでバスを釣りたい”って時代なんだよね~~ムフフフフ」。

単一魚種を、いつも同じ場所で、同じようなエサのようなワームで釣っても、それでは結局、エサ釣りの延長になってしまう。

何をしてもなかなか簡単に釣れないのなら、思いもかけない釣り方、こんなルアーでデカいバスが釣れるんだという感動、1匹のバスとの出会いを、いかに新鮮で感動的なものにできるか、それがルアーで釣ることの根源的楽しさであり、泉さんがいう「エサより釣りたい」ルアーフィッシングの矜持なのだろう。

ただ、その矜持を今のTOP50に持ち込んだ時、結果を出せなければ、それはただの負け惜しみであり、言い訳にしか過ぎない。

だが、それを諦めただ釣ることだけ、勝つことだけを試合に求めるなら、自分にとってもはやそれは普通の「釣りのウデ自慢大会」に過ぎない。

自分がエサ釣りをしない理由、バス以外の釣りにあまり興味がない理由もココにあるように思う。

このルアーで釣りたい、このルアーで勝ちたい、その想いが強ければ強いほど、今のトーナメントでは弱くなる。だが、その想いがなくなれば、もはやTOP50のためのNEWルアー開発は必要ない

2年前、地道な釣りに徹してTOP3に返り咲けたことで、昨年、今年と自分本来のスタイル、すなわち「このルアーでバスを釣りたい、勝ちたい」に戻して挑んできた。

しかし、現時点で結果は惨憺たるものだ。

今回、本番で使った全てといってもよいルアー達。「このルアーで釣りたい」、「このルアーの威力を試合で証明したい」、その信念は、もはや今のTOP50では足枷でしかないのだろうか……

この2戦連続ノーフィッシュで、今年のTOP50残留権30位以内は、残り2戦よほどの高成績を出さない限り厳しくなった。

昨年のような大量繰り上げ残留がない限り、初めて永久シード権を行使しなければTOP50来季残留はできないだろう。

人生60周年、イマカツ20周年、JB40周年の節目の年となる来季、ルアーアングラーとしての矜持を茨の道を進む覚悟で取るか、今のTOP50で生き残ることにだけに集中するべきなのか、今はまだ答えを出すことができない。

結局、どんな状況に置かれようとも、残り2試合、燃え尽きるまで全身全霊でトーナメントに挑むことでしか、その答えを知ることはできないのだろう。