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苦労したこの1本。ロッドメーカー・天龍に聞く

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国内工場を持ち、クオリティの高いロッドをリリースし続けている「天龍」さんにモノづくりの楽しさ・難しさについてお話を聞いてきました。

多くの人気ロッドはもちろん、C・N・T(カーボンナノチューブ)やマグナフレックス製法、京都の西陣織をカーボンシートに採用するなど、その独創的なテクノロジーでもユーザーの心をつかんでいます。

舟木雄一さんに聞いてみた

今回は、「天龍といえば」のこの方、舟木雄一さんに「開発で苦労したロッド」を聞いてみました。

 

最も開発年月がかかったロッド

天龍といえば、本質を突いたロッドを数多く出しており、企画・開発スタートから実際のリリースまでにはしっかりと時間をかけている印象があります。

ユーザーからすると、ヤキモキさせる部分も?だが、それがイイのだ(笑)。

そうして産声を上げたロッドは納得のモノばかりだから。

そんな天龍だからこそ聞いてみたかった「ズバリ、最も苦労したロッド」

完成まで5年

舟木:開発の年月でいえば、スパイクシリーズのスパイクトラベルですね。

スパイクは大型青物やGTなどを狙うオフショアキャスティングロッドで、スパイクトラベルはそのクオリティを落とすことなく遠征などでも扱いやすいようにと、3ピース化したシリーズになります。

開発年月だけでいえば5年かかりました。

サッカーW杯でも4年に一度。小学一年生は五年生に…。5年という歳月は、ちょっと驚愕だ。そこまでの期間を要した理由はどこにあったのか。

 

舟木:通常、ロッドの開発期間でいえば1年くらい、長くても2~3年ほどだと思います。

5年は普通であれば開発中止になる期間かと思います…(笑)。

ただ、自分たちは妥協だけはしたくなくて。これはスパイクトラベルに限ってではありませんが、どうしても開発・テスト期間は長くなってしまいがちですね。

お待たせしているお客様には本当に申し訳ないと思っているのですが、やはり使ってもらうのであれば納得した出来にしてお渡ししたいと考えているので。

スパイクトラベルに関していえば、開発が2012年ごろ、完成は2017年の夏にようやく完成となりました。

数多くのサンプルが生み出されては、消えていった

 

何が難しかったのか

舟木:やはり、3ピース化するうえでの強度とバランスの調整、これが難航しました。

当然継ぎ目が増えますが、簡単にいえば強度重視で作れば重くて使いにくく、アクションを重視すれば強度に劣る、そのすり合わせですね。

そして、もうひとつ非常に難しい問題がありました。

スパイクトラベルで想定される対象魚、そしてキャスティングロッドであることを考えると、「3ピース化」と「ガイドセッティング」がどうしても理想的なバランスにならなかったのです。

スピニングリールは、キャスト時にリール(スプール)からラインがスパイラル上に放出されますよね。

ラインの放出が最初のガイドに接触し抵抗になり、その抵抗がだんだん小さくなりチョークされていきます。

その工程がいかにスムーズにできるか、これがキャストにおける重要な要素。

使用するラインの太さ、リールの大きさ、スプールの口径によっても変化しますし、それに合わせたガイドの大きさ、位置も変化してきます。

ここで問題だったのが、放出からバットガイドに行き着くまでの距離でした。

3ピース化した時に、ガイド位置はちょうどジョイント部近くになります。ガイド位置をジョイントより上(穂先側)にすると抜けはよくなりますが、強度が弱くなる。逆にすると強度は増すがラインの抜けが悪くなる…。

もう、そこからは本当に微調整になってきますよね。ガイド一つとってもサイズなのか位置なのか、細かく調整して理想の仕上がりに近づけていきました。

もちろん〝継ぎ〟が複数あるロッドですから、ガイドだけを考えればよいわけではありません。実際に魚を掛けた時は曲がるわけです。余計に負荷が掛かる箇所がないか、それらも複合して考えていって…。

本当に数えきれないくらいテストを繰り返し、ようやく「納得のいくロッド」が完成したという感じですね。

 

リールシート部には所有感を満たす、西陣織仕様のカーボンパイプを採用

リールシート部には、テンリュウおなじみの西陣織仕様のカーボンパイプが採用されていますよ。

ちなみにジョイント部には3機種それぞれのカラーが配置され、同レングスの機種ながらどれを差し込むかが分かりやすい工夫が

 

3ピースのガチ仕様

出典:テンリュウ

実に5年という長き開発の末に完成したスパイクトラベル。

3機種ともにマルチピースでガチ仕様という高難度の条件をクリアして、今ではユーザーに愛されるシリーズとなった。

パワーファイターにスプリンターを遠征で…なんて考えている方には非常にオススメのロッドとなっています。

レングス( m [ft]) 仕舞寸(cm) ルアーウエイト(g) ライン
(PE)
ドラグMAX

(kg)

リアグリップレングス

(mm)

ロッドウエイト

(g)

カーボン/グラス

(%)

希望小売価格

(税抜き)

SK803S-MH 2.44[8’0″] 93 MAX100 MAX5 7 505 363 88/12 ¥55,500
SK803S-H 2.44[8’0″] 93 MAX150 MAX6 10 505 378 90/10 ¥56,000
SK803S-HH 2.44[8’0″] 93 MAX200 MAX8 13 505 394 89/11 ¥56,500

天龍公式スパイクトラベル詳細ページはこちら

天龍(TENRYU)

1961年、六角竹竿加工業として下伊那郡鼎町下茶屋に塩澤製作所設立。1990年、株式会社 天龍に社名変更及び改組。創業当時、六角竹竿で一世を風靡し、1970年には日本初となるバスロッドを自社ブランドで発売。以降、カーボン素材を主軸に幅広い時代のニーズを先読みしたアイテムを輩出している。ソルトウォーターでは超軽量&高感度のSWライトゲームロッド「ルナキア」、ライトジギングでは「ホライゾン」が有名なほか、バス、トラウト、エリアフィッシング、さらにはテンカラなど、非常に幅広いジャンルでこだわりの強いロッドを生み出している。