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関根健太の現代タチウオワインド考

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タチウオ特集2020

関根 健太(Kenta Sekine) プロフィール

ワインド釣法の伝道師として、タチウオブームを牽引してきたルアーアングラーのひとり。秋は足繁く大阪湾に通い、タチウオを追う。春夏は琵琶湖でバスのプロガイド船を営み、毎年、夏、北海道に2週間滞在しトラウトを狙う意外な一面も持ち合わせるマルチアングアー。ラグゼプロスタッフ

ワインドという釣法がタチウオに有効であるとして、世に広まって10年以上がたった。その情報の発信源にして中心的人物のひとりが関根健太である。しかし、最近は厳しい。

「海に潜ったわけでもないし、感覚的な話に過ぎないが、釣りをしている感覚としてはタチウオの魚影が10分の1になっているくらいに感じる」

釣りづらい。

「カタクチイワシが減少したこと。地球温暖化が進んだこと。理由はいろいろあげることができます。ただ、アングラーはその状況に対応していかざるをえない」

例えば、8月にまとめて接岸する群れがいなくなった。そして、ハイシーズンがだんだんと後ろ倒しになっている。

「そのかわりシーズンは長くなりました。11月いっぱいは釣れるし、12月になっても釣れる。悪いことばかりではありません」

スローワインド、そしてスイミングワインド

激しくシャクって目立たせてスイッチを入れ、高活性のタチウオを狙っていたのは昔の話。いまはスローワインドというジャークとジャークの間にストップを入れる。このストップがフォールを生み、追い切れないタチウオに口を使わせるきっかけになる。

「スローワインドでも速すぎる、暴れすぎる、追い切れない。そういうケースがある。そこでスイミングワインドという、リトリーブにジャークをおりまぜる方法がメソッドのひとつに加わりました」

ジャーク&フォールからリトリーブ&フォールへ。スピードもだんだんスローに。群れが薄くスレたタチウオを攻略するために、ワインドは進化する。

「ちょっと違いますね。バシバシとド派手にシャクるワインドは出番が少なくなりましたが、スローワインドとスイミングワインドは使い分ける。1日のうちで、どちらも出番があるんですよ。手を変え、品を変えて1匹ずつ積み重ねるための手段のひとつになります」

スイミングワインドにはシャッドテールのスマートシャッドが活躍する。

「シャッドタイプのテールがただ巻きでもタチウオにアピールします。また、フォールの際にテールがアクションすることでフォールスピードを抑える働きをしてバイトしやすくします」

ラウンドDヘッドに軽量追加

ジャークの際には抵抗になり、ダートする距離を抑えることになるが、いまのタチウオには横っ飛びする派手なダートはマイナスで、左右に首を振るドッグウォークのような控え気味なダートの方が効くという。それには、むしろシャッドテールがいい。もうひとつ、新たなる武器として加わったのがラウンドDヘッドの7g、5g、3.5g。

「スイミングとフォールを追求すると軽量なジグヘッドは欠かせない。7gが追加されたことで、タチウオのいるタナで長く魅せることが可能になった」

上のタナをゆっくり引く。フォールでスローに落とす。流れに漂わせる。シャローを攻める。ベースとなる14gでは速すぎる時に、10g、7gがあることで攻略の幅が広がった。

「5gと3.5gは、沖堤防ではなく岸から釣るような場合にシャローで出番があります」

とはいえもっとも出番が多いのは14g。

「夕マヅメから釣ることが多いのも理由の一つですが、沈むスピード、飛距離、シャクったときのダートの距離。あらゆる意味で14gがベースになります。まずは、14g」

夜光とシルバーがあるが、関根はシルバーを選択することが多い。

「夜光のヘッドに夜光のワームでいいんですが、それだと強すぎる場合がある。ワームは夜光にしてヘッドをシルバーにするとシルエットを抑えることができる。ややナーバスなタチウオが多い場合にもちょうどいい。あと、かじられても色が剥げないです」

ワームのカラー

ワームのカラーは悩みどころ。

「もしも、1色といわれたら夜光ラメ一択ですね。夜光は外せない。夜光があればかなりのシチュエーションをカバーできます」

ただし、夜光が極端に嫌われるケースもある。そういう場合にはパールホワイトの出番。

「ヘッドをシルバー、ボディを夜光。ヘッドを夜光、ボディをパールホワイトとか、光る量を調整することはよくあります」

また、夕マヅメや朝マヅメのように光量がある場合にはケイムラパープルミックスラメを選ぶ。

「明るくて、濁りがあるときにケイムラパープルミックスラメですね。潮が澄んでいるときは透き通っているケイムララメを投げます」

タフコンから絞り出す

この日は、濁りがなかったものの曇りで光量が少なかったため、パールホワイトからスタートした。

用意したロッドは3本、ワインドマスターR 86MH、89Lソリッド、86Mソリッド。

「ふだんの釣行では、86Mソリッドと89Lソリッドの2本。これが後期になると魚が大きくなるので、86MHと89Lソリッドの2本に変わります」

メインラインはすべてPE0.8号、リーダーは86MHと86Mソリッドにはフロロカーボン20ポンドを1ヒロ。先にはKGワイヤーリーダーを装着する。89Lソリッドにはナイロンリーダー40ポンドを装着し、こちらにはワイヤーリーダーはセットしない。また、発光体をジグヘッドの50㎝上にセットする。

「太めのナイロンリーダーを入れて表層をスローにソフトに攻めるためのセット。太めのナイロンなので沈みが遅い。また、スローに巻くのでタチウオに見切られないようにワイヤーは使わない。ワイヤーを入れないのでフォールを多用する釣りには対応しません。リトリーブ中心のタックルです。発光体は集魚効果もあるんですが、夜間、キャストした場所や巻いている場所を正確に把握するための目印にもなります」

 

この日、選んだポイントは須磨一文字。渡船屋『須磨丸』で沖堤防に渡った。水深は10m少々と浅く、大潮まわりはかなりの急流が走る。

「いまは小潮なのでだいぶ潮もゆるいですね。船長の話では、長潮・若潮の時の方が釣果はあがっているということでした。須磨、神戸、泉佐野のように潮が走る場所は必ずしも大潮がいいわけではなくて、むしろ小さい潮まわりの方がタチウオの場合は釣れます。ただ、最湾奥エリアの場合には大潮・中潮がいいです」

須磨一文字では2週間前の9月中旬に、ひとりで50匹の釣果が上がったというから、シーズンインしているのは間違いないのだが、いまはなぜか小休止状態。

「釣果のムラが激しいのが近年のタチウオ事情ですね。昔は1度、群れが入ったら釣れ続くものでしたが、行ってみないとその日の状況がわからない。ただ、10月・11月は安定した釣果が期待できます」

 

 

水深10mのポイントで上から3分の2のライン。だいたい6m前後をキープするようにスローワインドで攻め始める関根。

「まだまだ夕マヅメで明るいし、浅い場所なので中層より下を中心に探っています。だいたい14gのジグヘッドで1秒1mのフォールスピードをイメージしています」

着水後6秒ほどフォールさせてベールを返し、リトリーブを開始する。ルアーはシャッドテール。

「最近は、本当にシャッドテールの出番が多い。ただ、朝マヅメは速い動きに反応がいいので、そういう時にはピンテールのスマートミノーを使います」

強めのスローワインドで誘う。足元まではジャークせずに沖目で回収している。

「水深の浅い場所では、暗くなるとタチウオが沖から徐々に接岸してきます。ですから、明るいうちは沖の深場だけを集中して攻める方が効率はいいです」

足元をしっかり探るのは、ピックアップ直前でタチウオがバイトしてくるようなとき。ところで、アシストフックは必要なのだろうか?

「アシストフックはあった方がいいです。というよりも、アシストフックにフッキングすることの方が多いです。僕はシングルフックを使います。バイトが多く、群れが濃いときはダブルフックを使用しますが、最近は、シビアな時の方が多いのでシングルフックの場合がほとんどです」

シングルフックのアイの部分に被せるゴムのカラーまでこだわるのが関根流。夜光とブラックを使い分ける。基本的には夜光のほうが目立っていいのだが、嫌がられるときにはブラックにする。なお、フックをワームにセットする場合、ボディを湾曲させてから刺すことでピンと張った状態を保つ。ワームがまっすぐ泳ぎ、ちゃんとダートさせるために重要なセット方法で、ひしゃげたり、リングにたるみがあるとアクションが狂いやすく、フッキングも悪くなる。

「アタる。けど、乗らない」

ほら、と見せてくれたワームにはタチウオの歯形が無数に刻まれていた。

「タチウオのバイトがあれば、フッキングに至らなくてもワームに歯形が付く。だから、バイトがあったかどうか、群れが入っているかどうかは確認できる」

やがて日が暮れると、シャクりの鋭さが消え、ソフトにマイルドにスローに変化していった。

「ここまで行くとワームは左右にダートするのではなく、ふわふわと上下するようになるので、厳密にはワインドではないです。この状態をなんと名付けたらわかりやすく浸透するか、いま、頭を悩ませているところです」

満潮がらみで潮位が高い。

「岸からのタチウオでは潮位が高いタイミングの方が釣れる。ただ、それでも今日は乗せきれないですね。アタリはありますが、群れが薄くて追い気が弱い。奪い合うようだとガツンとアタリが出るんですが、散発的に散っているんでしょうね」

こうなると狙うタナも定まらない。

「ボトムの方まで沈めてアタってきました。でも、潮が緩く、ベタ凪なのでどちらかといったら本来は上の方が魚の数は多くなるはずです」

14gでシャクり、上のタナをキープしようとしていたが、それだとスピードが速すぎると判断して10gにチェンジ。一度、沈めてから、シャクり上げ、かつ、スローに誘う。下げの流れが効いているものの、時折、甘噛みのようなバイトを出すことしかできない。86MHで激しくシャクり、あるいは86Ⅿソリッドでソフトにスローワインドを試みる。また、89Lソリッドでスイミングワインドを繰り出す。タチウオはいる。だが、少ない。あるいは、活性が低い。

潮位が下がり、活性が落ちたのかアタリが遠のいた。この日は、夜が深まってもタチウオの接岸が増す様子はなく、やがて潮止まりを迎えた。

「ダメかもしれないな」

ぽつりとつぶやいた。

ボウズを覚悟した関根が後ろを振りかえると、沖堤と岸の間を流れる水路が目に留まった。流れをさえぎるように突き出た堤防の付近には確かに流れが目視でき、ヨレている。

何の気なしに投げた1投にアタリが出た。しばらく遠のいていた待望のアタリである。

タチウオはいる。

しかも、まだ、食い気がある。

最後のチャンスとばかりに気合いの入ったシャクりを繰り出す関根。だが、続かない。

「雰囲気はある。なぜだ」

手を変え、品を変え、しばらく粘るものの手元に伝わるのはワームと流れの重みのみ。いよいよ撤収の時間がせまる。

あきらめたのだろうか。

ソフトなシャクりというよりも、気の抜けたような、投げやりのような、なんとも精彩を欠くシャクリに切り替えた関根。

ジリリッというドラグ音と共に弧を描くワインドマスターR。

無言で巻く関根。

次の瞬間、銀白の魚体が宙を舞った。

「獲った。あぁ、獲った」

前日は20本の釣果を叩き出していた関根だが、この日の釣果はこの1本のみ。しかも、7時間シャクり倒した先でようやくフッキングに持ち込んだ1本である。

「いやぁ、しびれますね。これがいまのタチウオです」

途切れないアタリで爆釣するのもタチウオだが、完全なる沈黙の中、1本を無理やりひねり出すのもまたタチウオである。プロアングラー関根の執念がもぎ取った小さな勝利をもって、この日の釣りを終えることができた。

がまかつ(がまかつ)

1955年創業。大阪府大阪市に本社を置き、シンガポールに本店を置く。釣り竿、釣り針、ウェアなどをメインに製品を開発・製造・販売を行っており、ルアー部門では「ラグゼ シリーズ」が有名である。