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今江克隆のルアーニュースクラブR「バサーオールスタークラシック2025参戦記」 第1264回

連載:今江克隆のルアーニュースクラブR
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自分にとって節目の年となった2025年を締めくくる、バサーオールスタークラシック2025が閉幕した。

14日間連続の練習期間をこなして本戦に挑んだが、ライブ配信カメラが載っているにもかかわらず初日ノーフィッシュ、2日目1尾で見せ場も爪痕も残すことなく終わった。

3年ぶりに利根川の佐原「道の駅」が会場となったオールスタークラシック。この多くのファンの前で、選ばれた選手としてトーナメントを戦えることだけでも誇りである。

佐原会場の最高のスタート風景。これだけでもこのトーナメントに出場する価値があると思ってしまう壮観な風景だ。

バスボートの機能美がこれほど映える試合は、バサーオールスターをおいてほかにない。バスボートの性能をフルに発揮することで、そのアドレナリンで身体を維持していると言っても過言ではなかった。

観客の視線が痛かったノーフィッシュの初日。マスクで顔を隠したのは、穴があったら入りたいような気持ちだったから。ノーフィッシュだったが、なんとか無事出場できたことにすでに満足している自分がいたかもしれない。

今思えば自分の2025年は、年間31位で迎えたTOP50最終戦霞ヶ浦全域戦で初日ノーフィッシュとなり、2年連続自力残留がほぼ不可能と思われた2日目、奇跡のトップウェイトをマークし自力残留を決めたその時点で、精魂尽き果てていたように思う。

年初、もし2年連続でただ一人所持する「TOP50永久シード権」を使うことになれば、来年を引退興行の年としトーナメント引退を心に決めて挑んだ今シーズンだった。

満を持した初戦で最下位、2戦目でそれを帳消しにする6位、ところが最も得意の第3戦遠賀川でノーフィッシュ予選落ち。もはや絶対に落とせない第4戦檜原湖では、RSウイルスに罹患し38度の高熱と肋骨が骨折するほどの咳をおして死に物狂いで初日34位から、死守すべき15位には届かなかったが17位フィニッシュ。そして残留圏内ギリギリの31位で迎えた最終戦での初日ゼロ。何度も何度ももうダメだと誰もが思ったであろう絶望の淵から、ゾンビのように蘇った自分の心も体も、限界をもう超えていたと思う。

試合当日は午前0時に起床し、3時間かけて身体が動くように調整していた。ほとんどまともには眠れていないが、緊張感と気力、ファンの応援が疲れを全く感じさせない。

なんの爪痕も残せなかったが、最後まで一切手を抜かず、休まず、やれることはすべてやり切ったことだけは自分を褒めてやりたいと思う。

61歳を超えての現役最前線

このような言い訳をするのはプロとして恥ずかしいが、最終戦後、約10年ぶりに持病の腰に違和感が発生していた。だましだましオールスター戦の地へと向かったが、練習初日からあと一歩で棄権を考えたほど酷い腰の激痛に襲われた。朝は歩行すら困難で、練習でホテルを出発するまでに、毎朝、日の出前に部屋で3時間の入浴とストレッチ、低周波治療に時間を要した。

今朝、ルアーニュースの締め切りを遅らせてもらい専門病院で検査を受けてきたが、40代の頃に死ぬほど苦しみ2回の手術をした「椎間板症」の部分が、加齢と筋疲労で「椎間板変性症」に進行しており、完治は厳しいと主治医に診断された。ライブサイトのために昨冬からずっと鍛えてきた脚力は若者たちとそれなりに渡り合えるレベルになったが、脚を登坂トレーニングで強化したことで腰に負担が掛かっていたのかもしれない。

61歳を超えての現役最前線を維持するには、やはりどこかを鍛えれば別のどこかが犠牲になるようである。

だが、それでもオールスター戦のための練習14日間は今までと何も変わらないメニューを、夜明けから日没まで休むことなく完遂した。そのモチベーションは、むろんオールスターは勝つことが最重要だが、応援に来てくれるファンのためにどんなに不格好でも、客寄せパンダだったとしても、若いプロたちに必死で戦うその背中を見せることが自分の矜持であり、今のバスプロ界での役割だと思っているからだ。

ある意味、その想いは試合後に思わぬ形で報われるのが、自分がオールスタークラシックに出場する価値であり存在意義なのかもしれない。

青木大介プロの圧勝は本心から偉大だと思うし、本心からリスペクトしている。かつて憧れ、倒すべき目標を倒し、今度は憧れられ、倒される側に回った重圧をこれから10年は絶対に背負ってほしいと思う。そして一周回って立場は逆転したが、自分がトーナメントを続けるためのモチベーションでもあり、倒したいと思うラスボスであってほしい。

新たな次元に入ったラスボス・青木大介プロのまさに圧勝劇に終わったオールスタークラシック2025。自分が完全に捨てた北浦最上流でのビッグウエイトには心底驚かされた。

今回の戦略

最後に簡単に今回の自分の戦略を書き残しておきたい。

今回のバサクラは久々に利根川の佐原が会場となったため、練習の2/3の日程を利根川での練習に充てた。

だが、他のプロのほとんどが同じ考えのようで、利根川を徹底的に練習するプロがほとんどのようにすら思えた。事実、本戦で霞水系に出たプロは数えるほどしかいなかった(なぜか昭和ダイナミック連合のプロが多かったが…)。

結局、日本一長く、自分には経験値も少なく、さらにタイド(潮)の干満が激しい利根川を8日そこらの短期間で、1ヶ月近い連続練習をしている地元プロたちと互角に戦える戦略は自分には見つけられなかった。

練習開始初日、テスト兼広範囲サーチベイトとして丸一日投げ続けた新型バイブレーションとグラスコンポジットロッドに、なぜかあっさりと乱杭テトラのスポットでグッドサイズ2本が釣れてしまう予想外の出来事が起こった。

利根川初日に杭が並ぶテトラ帯で抜群のカバー回避力を発揮した、新型バイブレーションのプロト。ハードボトムで立てることも可能なバイブレーションだ。

バイブレーションを投げるプロは少ないのでこれはアリか?と思ったが、翌日から最終日までノーヒット。試合後に分かることだが、この時入ったスポットが有名な場所で、日に日に利根川にプレッシャーが掛かるとともに巻き物への反応が完全に止まってしまっていた。

利根川練習開始、即、新型バイブレーションの乱杭通しで釣れた利根川のグッドサイズ。これは利根川メイン間違いなしかと思ったが…ハードベイトでの再現性が日に日にハンパないプレッシャーで悪化していった。

新型バイブレーションはバス以外にシーバスも実によく釣れた。利根川での練習初日はプロトバイブレーションとTOP50霞ヶ浦戦で完成したグラスコンポジットロッドの最高のテスト兼新戦力になるかと思ったが…。

途中、バスロイドjr.Tabooでもグッドサイズが1尾釣れたが、これもその後やり続けるも全く後が続かず。恐らくMLFショアリーグLIVE配信で益子君が派手な優勝をしたために、首振り系ビッグベイトをここぞのスポットで初手として投げているプロが激増。一番早くにプレッシャーが掛かりきり、大場所では威力が激減していった。

「バスロイドJr.Taboo」は練習初期には確かに効いたが、チンペープロの衝撃的なMLFショアアタック優勝で全員がビッグベイトを意識してしまい、プレッシャーでスポットがほとんど潰れてしまった。

今回練習でメインに使った「バスロイドJr.Taboo」と「ギルロイドJr.DIVE(夜光貝)」。ともにDIVEのライブテールを装着したが、首振りでも本当に生きた魚のようにバラけて震えるテールアクションは実に秀逸だった。

結局、サイズは良いがメジャースポットしか把握できない利根川を諦め、TOP50戦での経験値が高い霞水系に練習を切り替えた途端、霞ヶ浦の小野川ではグッドサイズを短時間に複数匹手にできた。だが、佐原会場から小野川上流までの移動時間は樋門越えもあり、ゆうに往復4時間かかるため、実質釣りができる時間はわずかに2時間半程度の、まさに超短期決戦の大ギャンブルであることからこれは当初捨てるつもり…だった。

そして結果的に練習の中日、1日5匹ものバスを練習中に手にできたのは、北浦の水原~八幡、最上流の巴川周辺のツルノゲイトウを狙った、TOP50戦でも奇跡を起こしたMaxScent・リルスーパートゥルーパー2.5インチの5~7gリアクションテキサスだった。

これにより最終的にメインを北浦に設定、利根川、最終日に浪逆浦~北浦を再チェックした結果、超クリアアップして底が丸見えになっていた北浦の巴川を捨て浪逆浦~水原~八幡の浮遊型水生植物「ツルノゲイトウ」狙いに決めた。

14日間の練習で1日だけ5匹釣れたのが、浪逆浦~北浦水原、八幡、巴川のツルノゲイトウを狙った「MaxScentリルスーパートゥルーパー2.5インチ」のリアクションテキサスだった。キーパーは固いと思ったのだが…。

ブッシュではなく珍しくツルノゲイトウをメインにしたのは、腰の状態が酷いため、ランディングネットの使用が禁止された今回、ブッシュ奥狙いは無理な体勢でのランディング時に放送事故を起こしてしまう可能性が高く、最初から捨てざるを得なかった。

言い訳になるが、ランディングネットの使用が今年からまた禁止されたことで、ゴボウ抜きしか選択肢がなくベイトフィネスのラインをいつもの太さから2lb上げて使用したことも微妙にキャスト精度に影響してしまった。

結果的にツルノゲイトウパターンはどんなにていねいにアプローチしても全く機能しなかったのは、ライブ配信を見てのとおりである。

恐らく急激な気圧上昇と水質のクリアアップによって、リアクションへの反応が悪くなったからだと思う。

皮肉にも自分が昔から得意としていながら今回クリアアップで捨ててしまった北浦・巴川で、青木大介プロは見事なスモラバの「ブッシュ&ゲイトウ吊るし」で圧勝してしまった。クリアアップして底が丸見えだからいないと思い込んだ、自分の完全な判断ミスだった。

ノーフィッシュに終わった初日、優勝以外意味のないオールスターゆえ、もはや3尾3500g超えでわずかな大逆転を狙うには4時間往復に時間をかけても、小野川でのわずか実釣3時間未満のギャンブルに賭けるしかなかった。そしてここでもリアクションテキサスも、ノーシンカーも沈黙した。

ただ狙ったストレッチを流した後、リルスーパートゥルーパー2.5インチに微かな抑え込むような反応を感じたため、咄嗟に1パックしかなかったサンプルのMaxScent・スタンバグの手をカットしたイモノーシンカーを使ってみた。この判断が奏功し、一度バイトらしき反応があった場所に再度スタンバグ・イモを入れると再び食ってきて、なんとか1尾のバスをウェイインすることができた。「これが正解か!」と思った時にはすでに時間切れ、もはや帰路に就くしかなく、自分のオールスター戦は終わった。

小野川のプラでは「スキップドッグ」と「リルスーパートゥルーパー2.5インチ」で短時間に3バイトが取れていた。だがここから水温が低下したことで本番は食い渋ってしまった。そこで思いついたのがMaxScentのイモだった。

実はMaxScentは並の高比重ワーム以上に高比重である。ワイルドカードを制した「スタンバグ」の手をカットした「イモ」が、実は今回の状況の最強だったことに試合中に気付いた。今後、異常にタフな時に強力な食わせの武器になりそうだ。

明日からまた

これほどまでの長期間仕事を休み朝から晩まで練習し、恐ろしいほどのガソリンや宿泊経費を掛け、3日で数尾しか釣れないルアーテストにもならないフィールドで、さらに悲鳴を上げる身体を酷使してまでオールスターに出る意味があるのだろうか…正直、ずっと自問自答していた。

だが、試合が終わればノーサイド、懐かしいライバルたちや二回りも年の離れた若いプロたち、そしてその家族がお互いをたたえ合いリスペクトし、そして寒い中夜明けから日没まで熱心に応援してくれる多くのファンを目の当たりにすると、この大会は決して優勝だけに価値があるのではないことを実感する。

優勝にしか価値はないと思っていたバサーオールスタークラシック。だがこの2年、出場することに、違う意味での大きな価値を感じる。

今回もまたファンの期待に応えることはできなかったが、トーナメントプロ人生を一周してまた一人の挑戦者に戻り、明日からまた遠い勝利を目指して今の自分にやれることはすべてやっていこうと思う。

それが少しでも長年にわたり変わらず応援してくれる多くのファンやサポーター、スポンサーへの恩返しとなる限り。

試合後、ルアーニュースクラブRを書き切ることで自分に折り合いをつけ、また先に進めると自分は思っている。明日からまたイチからスタートだ。

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