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固定観念の向こう側へ。ルアーも魚も、枠を越えて生きている

連載:加来 匠レオン「ライトゲームマニア」
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釣りを一生楽しむために必要なこと

僕がこれまでの書籍や講演で一貫して語り続けてきたテーマ。それが「固定観念からの脱却」だ。

釣りが上達しない最大の理由は、技術や道具の差ではない。それは「思い込み」だ。

「この魚はこういう餌しか食べない」「この釣り方じゃなきゃ釣れない」

そんな決めつけが、アングラー自身の成長を止めてしまう。

レオン 加来 匠(Kaku Takumi) プロフィール

加来匠(かく たくみ) 中国&四国エリアをホームグラウンドとし、メバルやアジ、根魚全般の釣りを得意とする生粋のソルトライトリガー。レオンというのはネットでのハンドルネームとして使い始めたが、いつの間にか、ニックネームとして定着。ワインドダートやSWベイトフィネスなどを世に広めた張本人、新たなスタイルを常に模索中! 「大人の遊びを追求するフィッシングギアを提供する」ことを目的としたプライベートプロダクション「インクスレーベル」代表もつとめる。
ジャンルという名の思考の枠

いまや釣りの世界には、メバリング、アジング、チーニング、シーバスゲームなど、魚種名を冠した釣り方があふれている。整理としては便利だが、同時に「メソッドの呪縛」を生んでいる。

「メバルだからこれは食べない」「チヌだからそんなルアーでは釣れない」そうした固定観念こそ、釣りの本質を曇らせる最大の要因だ。

さらに厄介なのは、メーカー側がつける“専用品”というラベル。「チヌ専用」「メバル専用」「アジ専用」…。こうした言葉が、アングラーの発想を無意識に縛ってしまう。

「専用」なんて、実はほとんど存在しない

僕がいつも言っているのは、よほどの例外を除けば「専用」なんてものはほとんど存在しないということ。なぜなら、釣れるか釣れないかは魚の都合と自然条件、そしてアングラーの創造力によって決まるからだ。

もちろん「豆アジ専用ジグヘッド」や「豆アジ専用ワーム」のように、狙う対象のサイズに合わせて作られた道具は理解できる。1インチ〜1.5インチのワームや小さなフックは、目的に沿った設計であり“専用”と呼ぶにふさわしい。

だが「アジ専用ミノー」「チヌ専用ポッパー」といったルアータイプを魚種専用とする考え方には、ほとんど意味がない。ミノーでもシャッドでもポッパーでもペンシルでも、さらにはチャターやスピナーベイトでも、肉食魚なら大抵釣れてしまう。チヌのような雑食魚でさえ、ペンシルやポッパーでボコボコ釣れるのだから。

つまり、ルアータイプという枠の中で“通用しないもの”など、ほとんど存在しない。これが僕の言う「専用なんてものはほとんど存在しない」という真意だ。

北海道・イトウハンター「拓釣」さんが教えてくれたこと

最近、この考えを象徴するようなできごとがあった。

INX.labelの北海道スタッフが紹介してくれたのが、“イトウハンター”として知られるYouTuber、拓釣(たくちょう)さん。北海道で年間最多のイトウを釣る名人である。

ある日、スタッフとのやりとりの中で、「では一度、一緒にイトウを釣りに行きましょう」と話がまとまった。スタッフがINX.labelのロッドを見繕って6機種ほど持参し、「この中で使ってみたい竿はありますか?」と尋ねたところ…拓釣さんが迷わず手に取ったのが、「ガリンペイロ911ティラドール(10ft)」だった。川幅10〜30mほどの小規模河川。普通なら7ft前後のショートロッドを選ぶ場面だが、拓釣さんはあえて10ftのロングロッドを選び、それをイトウゲームに使うと言う。

この選択には僕もかなり驚かされた。だが、その後アップされた映像を見て拓釣さんの意図を知り、その自由さと洞察力に心底うなった。

ナッゾジグを手に取り「これはイトウに向いている」と即断

さらに、インクスレーベルのルアーの中から拓釣さんが最初に手に取ったのが、「ナッゾジグ」だった。

手に取ってしげしげと眺めながら、「このジグ、面白いね。これはすごくイトウに向いてると思うよ。」そう言って、迷いなくナッゾジグを選んだのだ。

ナッゾジグは船底形状のボディを持ち、スプーンのように薄くも軽くもない。厚みと重心バランスが独特で、水を押しながら安定したフォールとスイミングを見せる。その形状を見ただけで、拓釣さんは「これはイトウのレンジとスイッチに合う」と即座に見抜かれたのであろう。

まさに「本質を見抜く人だ」と感じさせられた。

驚愕のメソッド ― ボトムのストップ&ゴー

そして迎えた実釣シーン。拓釣さんはキャスト後、着水からボトムを取ると、ロッドで軽くジャークを入れながら「スー」と引っ張り、少し間を置いてハンドルを巻き、また「スー」と引く。…つまり、ボトムをやや速めにズル引くストップ&ゴー。ナッゾジグのスイミングアクションを活かすのではなく、むしろ底を転がすようにしてイトウを誘った。その結果、一投目でヒット。

拓釣さんご自身は「小ぶりだな」と話されていたが、ヒットしたのは60cmクラスのイトウだった。

メタルジグはしゃくるもの、あるいは巻いて泳がせるもの。そんな固定観念を、拓釣さんはあっさりと覆してみせた。ルアーを“形と重心の理屈”で理解し、水中での動きを自分の想像で再構築して釣る。そこには、釣りを知り尽くした者だけが持つ自由な感性があった。

出典:YouTube「INX tv」

魚は“想像を超えて”何でも食う

「アジだから」「メバルだから」と決めつけてはいけない。魚は想像以上に多様な食性を持っている。

たとえば千葉・木更津沖のシーバス。ある季節になると、砂地に潜るアオヤギ(バカガイ)を鼻先で掘って食べるという話を、地元の漁師さんから聞いた。実際、掘り返す際に鼻先を擦りむいて傷だらけになる個体もいるという。

また、岡山の友人が釣ったマダイの胃袋からはヒトデの子供がぎっしり。僕自身が広島で釣ったマダイの腹を開けたら、中には新芽のように緑色の亀の手がびっしり入っていた。さらに若い頃、島の海岸で熟したイチジクが落ちる木の下でそれを食っていたのはチヌだった。試しにイチジクを角切りにして投げると、一発で食ってきた。

魚たちは、僕らが思う以上に“何でも食う”生き物だ。

鉄板バイブでメバルを釣った日

かつて僕が「ジャズ」に所属していた頃、“暴君”という小型鉄板バイブに出会った。試しに使ってみたら、ある使い方でメバルが連発した。

だが当時は誰も信じなかった。「鉄板バイブでメバル?ありえない」と笑われた。

しかし実際には、メバルもアジも、ワームで釣れない時にこそその威力を発揮した。その後、ブリーデン時代には“Bバイブ”を、そして今のINX.labelでは“ゴッツンバイブ”をプロデュースした。

今でこそ当たり前に使われているが、最初は誰も信じなかった釣り方だ。2026年には、また皆さんをあっと驚かせる新作バイブをお披露目できる予定だ。

まとめ ― 命のあり方を観察せよ

釣りとは、生き物と自然との対話である。

「専用品」や「定説」に頼るほど、釣りの幅は狭くなる。固定観念を持たず、魚の行動や命のあり方を観察すること。その心構えこそが、釣りを一生楽しみ、そしてどんな釣りでも上達できる唯一の道だと僕は信じている。

もっと自由に、もっと大きく。ジャンルや魚種の枠を越えて、自分の感性で釣る。

それが「固定観念からの脱却」であり、僕がずっと伝え続けている“レオン流・釣りの真髄”である。

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