パワーマスター・エクストリーム、その裏側
TENRYUの2026年注目ロッドのひとつ「パワーマスター・エクストリーム」。

その開発のきっかけ、コンセプトについてTENRYUスタッフの吉川直輝さんよりご寄稿を頂き配信させてもらった。
今回からはパワーマスター・エクストリームを機種別に掘り下げていきたい。再び吉川さんにPMX872S-XXXとPMX1073S-XXPのヒストリーを語っていただく。今回はPMX872S-XXXのテスト期間での変遷だ。
モンスターハントモデル「PMX872S-XXX」

まずは、「PMX872S-XXX」モンスターハント向けのモデルを紹介したい。
大型プラグとPE10号まで対応できるパワー系ショートロッドで、200~260mmクラスのダイビングペンシル(フックウエイト込みで約120~200g)や大口径ポッパー(フック込み180gクラス)をスムーズに扱えるパワーと、軽快なロッドでありながら大型のターゲットを掛けた際には、しっかり曲がることでユーザーへの負担を軽減し、魚にはしっかりプレッシャーを掛けられるロッドを作ることを目指した。
また、裏テーマとしてオフショアキャスティングの使用もコンセプトの一つとなっている。南西諸島でのショアジギング遠征では、出船できても想定より海が時化てしまい渡礁できない(ポイントに上がれない)といったことが時には起きてしまう。
そういった時に船(オフショア)からターゲットを狙うこともあるが、通常の9~10ftクラスのショアジギング向けロッドでは取り回しが悪く、トラブルの原因にもなってしまう。こういった有事にも、PMX872S-XXXがあれば取り回しが良くストレスなく釣りをすることができるメリットがある訳だ。
開発のスタート
ロッドの軸となるブランクは、基本となるアクションを現行モデルと同様にプラグ操作でミスダイブの少ないレギュラーファーストとし、バットセクションには大型ターゲットとのファイトで安心感のあるトルクを引き出すC・N・Tをコンポジットする依頼を出した。
ブランクの開発は微調整の積み重ねであり、テストはひたすらプラグを投げるところからスタートする。

PE10号に対応するキャスティングロッドは、TENRYUの製品だとグリップ脱着タイプが主流で、センターカットで印籠継ぎといった負荷が大きく掛かる部分にジョイントがあるロッドだったため開発には時間を要した。特に、ラインを受け止めるガイド位置の設定で、飛距離や操作性に影響を及ぼすため、ブランクに合わせた調整を繰り返し行ってきた。
気が付けば私の華奢だった体が、ロッドを振り続けたことで一回り大きくなっていった気がする。開発初期はシーズンオフだったため、ひたすら川や港で投げ続けていたことは今となってはよい思い出である。
テストは、インジェクションタイプのプラグからウッドプラグまで、160~250mmクラスの大小様々なダイビングペンシル・ポッパーを投げ続け、ティップのブレやバットパワー、グリップの長さなどを調整しタックルバランスも見ていく必要がある。
向かい風が強い状況では、風の影響を受けにくい低い弾道でも飛距離の出せるロッド性能も求められるので、サンプルを作成してはキャストするテストが初期は中心となった。
ある程度は、大型プラグのキャスト負荷に耐えられるベースのブランクはできていたが、ラインの抜け感とルアー操作のフィーリングが悪く感じられた。
違和感の元をたどると、バットガイドの干渉であった。
10ftクラスのロッドであれば、リールシートからバットガイドまでの距離を調整することはブランク長に余裕があるので容易であったが、今作は8ft7inchのショートモデルが故に調整幅が少なくテストは難航する。
また、ダイビングペンシル240mm(フック込みで160g台)や小~中口径ポッパー(120g台)までなら切れ良く操作する事ができるが、260mm(フック込みで190g台)のダイビングペンシルや大口径ポッパーでは途端に動きが緩く、理想の動きを演出できなかった。
テスト初期の改善点は、ガイド設定とルアー操作性の2点であった。
初期の改善点、ガイド設定とルアー操作性
開発初期のサンプルロッドには、バット部にスーパーオーシャンガイド(以後MNガイド)を逆付けして取り付けていたが、SW18000番クラスの大型リールを使用すると結束部分の音鳴り、ブランクへの干渉が酷くエアノットなどのトラブルが多発した。
原因はシンプルで、リールとバットガイドの距離が近く、ラインの放出が落ち着く前にガイドに干渉してしまうからだ。現行モデル(パワーマスター)でも同じガイドを採用していたが、リールとバットガイドとの距離が適度に確保できていたので、こういったトラブルが起きにくかった。
対策としてブランクの穂先側を2インチ短く、バット側2インチ長くする調整を行うなどガイド位置が少しでも離れないかテストを行うも、トラブル回避とはいかなかった。副産物ではあるが、穂先側を短くしたことでロッドを束ねて移動した際に、ジョイント部が地面(磯)に当たりにくくなるといった効果が出てくれたのは助かった。

そこで、MNガイドよりも足高なRVガイドに変更してみると正解だった。
大型リール(18000番クラス)を使用したロングリーダーシステムや、スペーサーPE等の太く抵抗の強いシステムを使用しても抜け感が向上、ライントラブルの減少を実感する事ができた。

この時点の試作ロッドでは、テスター大澤氏が南方の離島にてカスミアジやイソマグロを何尾もキャッチし、現場での強度は充分に確認できていた。


裏テーマであるオフショアでの使用でも、テスター佐藤光敏氏が20~30kgクラスのGTをキャッチしている。


次なる課題、大型プラグのキャスト性能と操作感

1つ課題を乗り越えたところで2つ目の課題が見えてくる。抵抗の大きな大型プラグを使用した際のキャスト性能とプラグの操作感の向上である。
PE10号で260mm(フック込み200g)のプラグを扱うこと自体は可能だったが、ティップがプラグを引く際の水圧に負けてしまい引ききれていない状態だった。
サンプル作成で選択肢は2つ。1つ目は、プラグの水圧に負けないよう、ブランクパワーを上げティップを強くする。2つ目は、ブランクパワーは上げずガイドをステンレスからチタンフレームにすることで、ガイドの軽さと硬さで張り感を出すという2択だった。
この時点で私(身長168cm・体重73kg)の体力的に限界近いパワーと感じており、これ以上にブランクパワーを上げてしまうと、キープキャストも魚とのファイトにも耐え切れないロッドになるのではと考えていた。
できれば自分の開発したロッドに振り回される事は避けたかったので、後者、ガイドを変更する選択肢を選んだ。
ガイド設定にて光明
同じブランクで、ステンレスとチタンフレームのガイドで作成し比べたところ、チタンフレーム版がブランクパワーを上げることなくシャープなキャスト感とプラグアクションの切れが増し、気持ちよく操作することができた。
しかし、全チタンフレーム版ではシャープ感が出て良かったものの、高負荷を掛けた際に強度の心配も出てきていた。ロッドを曲げて負荷を掛けると、一番負荷が集中するのがベリー部(4~5番ガイドあたり)となるため、チタンより強度があるステンレスフレームのガイドを付け直してテストを行っている。
そして完成したのが現状のガイドバランスだ。

トップから3番ガイドまでをチタンフレームとし、中間の4~5番ガイドをステンレスフレームMNガイド、バットガイドにチタンフレームRVガイドの組み合わせとなった。
グリップ形状にも注力
このプロトロッドを基準に、現場でのトラブルを微調整しながら新たなグリップ形状にも取り組んだ。
私が提案したグリップは、キャストを続けやすくファイトも楽に行える長さと形状だ。

フォアグリップは、大工が使う金槌のグリップ形状を参考に、フラットサイドに削り込む事で高負荷時にグリップが手の中で暴れることを抑制する形を求めてみた。リアグリップ長は、既存のパワーマスターでも実績のある495mmとしている。フォアとリアのエンド部には、2本のスリットを刻んであり、濡れても滑りにくい加工を取り入れている。

完成に至ったモンスターハンター
大きな2つの課題ではあったが、テスター大澤氏の多大なるご協力と、数々の無茶な要求に応え続けてくれた開発陣によってPMX872S-XXXが完成に至った。

テスト時の実釣や使用感についてはまた、釣行記事で紹介していきたいと思う。今回はここまで。次回は、PMX1073S-XXPについてお伝えしたい。
TENRYU Staff 吉川直輝


























































