不動の定番レングスを、もう一度超える
中本流域を遡上するサクラマス、サツキマス。トラウトの中でも屈指の難易度を誇るこのターゲットを、真正面から攻略するために開発されたのが、天龍の「レイズ スペクトラ RZS712S-ML」。

このロッドについては、天龍公式ブログで非常に詳しい開発ストーリーが語られている。ぜひ公式ブログも併せてチェックしてほしい。
完成度が高すぎた“初代”を、なぜ作り直したのか

RZS712S-MLは、名竿として知られる初代「スペクトラ RZS71ML」の後継モデルにあたる。しかしこの2代目、単なるマイナーチェンジではない。
公式ブログでも触れられている通り、初代は「完成していた」と言ってもいいほどの仕上がりだったという。それだけに、開発のハードルは非常に高く、何度も試作と修正を繰り返すことになった。
その末に辿り着いた答えが、不動の定番レングス=7ft1inchを、もう一度突き詰めることだった。
シャープさと粘りを両立したブランク設計
ブランクは初代よりも細く、よりシャープな印象に。ただし、単純に硬くしたわけではない。

C・N・T(カーボンナノチューブ)をコンポジットすることで、曲げ込むほどにじわっと粘る特性を持たせている。
ミノーを繊細に操作する。わずかなバイトを弾かずに捉える。
そのために必要な味付け。手にすると軟らかい印象を受けるかもしれないが、テスターの佐藤雄一氏も、寄せてみたら案外大きいサイズだった…というシーンがあるように、バットには十分なパワーが残されている。
操作感を左右するガイドとグリップの進化

ガイドは、初代よりバットガイドを足高に設定。スプールからのライン放出をスムーズにしつつ、あえて小口径リングを採用することで、ブランクだけを振っているような感覚を目指したという。
リアグリップは初代より10mm短く、エンドに向かって細くなるシェイプに変更。穂先側の軽量化と相まって、ハンドリング性能は確実に向上している。
「Jerkin’ MS Custom」という名前が示すもの
RZS712S-MLのサブネームはJerkin’ MS Custom(ジャーキン・ミッドストリーム・カスタム)。
旧モデルでは「Jerkin’ HD Custom」という名称だったが、今作から変更された。これは、ロッドの立ち位置が変わったことを示している。

初代はJerkin’ HDをベースとしたカスタムモデルだったのに対し、今作は初代スペクトラ71MLを起点に、中流域での使用を前提として再構築されている。そのため“MS=ミッドストリーム”という名称が与えられた。
6〜7cm(7〜8g)クラスのミノーを中心に、5ft台の渓流ロッドでは攻めきれないフィールドが想定されている。
ダム湖や天然湖でのランドロック狙いにも対応。オーバーヘッドだけでなく、バックハンドやサークルキャストも行いやすく、6ftクラスのロッドに近い感覚で扱える点も特徴だ。
開発初期には、7ftジャストのプロトタイプもテストされていたという。
取り回しや振り抜き感の向上を狙ったものだったが、テスターの答えはシンプルだった。
「やっぱり71MLなんだよな……」

軽量化はできていたものの、反発やブレに違和感が残った。そこから素材、テーパー、プライ構成まで見直し、最終的に辿り着いたのが、再び7ft1inchという答えだった。
「作り直す必要のない竿を、作り直した」という一節がある。
RZS712S-MLは、その“答え”として生まれたロッドだ。開発の背景を知った上で手に取ると、また違った見え方をしてくれるはずである。

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