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【真冬の明石でツ抜け!?】なぜ冬のマダイは「のり」を食うのか/海苔パターン解体新書

寄稿:Galápagos 高島 健資
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Galápagos連載「タカシマムザホルモンの【月刊】たいのきもち」

「マダイってね、海苔を食うんですよ。そりゃあもうムシャムシャと。」

…こんなことを聞かされても、このパターンが存在するエリア以外の方には、なにわけのわからないこと言ってんだ!と叱られそうですが…

本当なんです。タカシマムザホルモン、嘘つかない。

高島 健資 (Kensuke Takashima) プロフィール

Galápagosのディレクター…もとい、なんでも屋。軽い気持ちでタイラバの世界に足を突っ込み、今なお深い沼に沈み続ける毎日らしい。元バス釣りYoutuberだったり元ロッドメーカーの人だったりと一際異色の経歴で今日も現場に混乱を巻き起こしている。タカシマムザホルモンと名乗っているが、某ミクスチャー系バンドとは何の関係もない。

この海苔食いのマダイ、真冬の厳寒期でも釣れるひじょーーーにありがたい存在です。が、外すといとも簡単にボウズを喰らいます。

でも逆に上手くハマると…。

出典:YouTubeチャンネル「Galápagos -ガラパゴス-」

手もかじかむ1月の明石でツ抜けが出来ちゃうくらい爆発力のあるパターン!今回はそんな冬の必殺技である【海苔パターン】を解説していきますよ。

海苔パターンとはなんぞや

ジャパニーズソウルフードおにぎりの必須項目。くたくたに煮ればごはんですよ!海苔の佃煮。お餅に巻いたら醤油の香り引き立つ磯辺焼き。

ここでいう海苔パターンの“海苔”は釣り文化にありがちな比喩表現ではなく、正真正銘我々が普段口にしている“本当の海苔”なんです。

マダイの口の中には大量の海苔

ちなみに「海苔を消化できるのは日本人だけ」という話をよく耳にしますが、あれは半分本当の半分嘘だそうで、海苔に含まれる成分と腸内細菌(酵素)の関係上「生海苔」を消化できるのは日本人だけですが「焼きのり」は消化を阻害する成分が熱で壊れてしまう為、世界中の人が問題なく消化できるみたいです。

だからおにぎりはグローバルに浸透しているのかも知れませんね。知らんけど。

海苔の養殖

それはさておき。真冬のこの時期は、水温低下でベイトも少なく肝心のマダイも積極的に何かを追うような体力はない。またプランクトンの数も減少する為、水がクリアアップしやすく澄潮になりがち。と、マイナス要素が重なってしまう手痛い状況なのですが、厳しい環境下において、釣り人の心の支えになるのが…そう、海苔です。そんな海苔、実はこんな風に養殖されています。

海苔の養殖方法についてはこちら

この海苔の収穫時期が明石・淡路エリアの場合、おおよそ12月中旬頃から3月くらいまで。ふさふさと育った海苔、そして収穫で刈り取られた海苔の切れ端を食べに、マダイが海苔棚へ集結してくるのです。(ちなみに我らが明石・淡路エリアを有する兵庫県の海苔生産量は日本一ィィィ!)

食べるものが少ない時期に、特に苦労なくもしゃもしゃと食べる。人間で言うと「こたつでみかん」状態なのですが…それ故に、外してしまうと一気に難易度が上がります。想像してみてください。こたつの上は…やっぱりみかんですよね。スイカではないし、パイナップルでもない。この「みかん」にアジャストできないと本当に食ってこないのが海苔パターン。ベイトが豊富なことによって広い選択肢から当てなければいけない秋のパターンとは真逆の難しさです。

タカシマムザホルモンの「月刊たいのきもち」/一番ウマい“マダイ”を釣りたいなら、秋を釣れ。という話

この海苔パターンはどれだけ“完璧な海苔”を演出できるのかで勝敗が決まります。

見事勝利すれば1月の明石で12枚という大釣りも可能

そもそもなぜ彼らは海苔を食うのか?

海苔というベイトの良い所は“捕食が簡単なところ”です。…はい。実はそれ以外ないんですね。

ただでさえ極々低カロリーな上、一部のホモサピエンスにしか消化できないような食べ物。もちろん釣れたマダイも海苔を消化できているわけではありません。消化できない=体に吸収されないので栄養になりません。スポンジが体を通り過ぎているようなものです。

おしりからそのまま海苔が出てきます

ではなぜ彼らはそんなエサを必死になって食べるのでしょうか?正直に申し上げますと…僕もわかりません。常識的に考えればあまりに非効率なのです。ただ「鯛の気持ち」になって考えると、絶対これ!という答えこそ見つかりませんが、考えられる要素はいくつかあり、その捕食理由も諸説あるので紹介します。

説①:他にエサがない!

おそらく一番大きな要因はこれじゃないかと思います。

シンプルにエサが無い。無いと言っても“ゼロ”ということはあり得ないので“少ない”が正しい表現なのですが、低水温期の激流明石では余計な体力を消費しないように低燃費モードの魚たち。基本流されないように耐えるのがいっぱいいっぱいで余程体力のある個体でなければ生きているエサを探す、追いかける、捕食するというのは難しいかも知れません。事実海苔パターンで大型が釣れることは珍しく、僕自身も50後半か60前半くらいまでしか見たことがありません。

これは50後半、完全に海苔パターンの魚でしたが、大体これくらいがMAX付近なイメージ

今年2025年、青森県でマダイによるホタテ養殖への食害が深刻。というニュースがありました。(記事はこちら)明石エリアにおいて貝類の養殖はあまり多くないのですが、もしこちらでも貝の養殖が盛んだったのなら、明石のマダイは海苔ではなく、養殖貝を食い尽くすのではないでしょうか。だって貝の方が同じ捕食の難易度なら圧倒的に栄養価が高いですからね。もちろん、そんな「しょうがないから」みたいな理由で大事な商品を食われる海苔養殖の方々はたまったもんじゃないと無いと思いますけど。

説②:実は消化出来ていてちゃんと栄養になっている

…という話もありますが、個人的にこれはナッシング(もちろん可能性は0ではないですが)。海苔パターンのマダイを釣ると、お尻からビロビロ~と結構な量の海苔が出てくるのですが…この出てくる海苔、全く溶けていないんです。口にもいっぱい海苔が入っていますが、本当にその海苔と同じ状態で出てきます。ということは、消化できていません。海苔自体は。そう、海苔自体は、です。

説③:海苔に付着している微生物や有機物を栄養にしている

これ、あるんじゃないかと思っています。海を漂う海藻を拾ったら小さな蟹や虫がくっついていた、なんて光景よく目にしますよね。これは海苔棚の海苔でも同じことが起きているはずです。むしろ海苔の育成に適した場所ですから小さな生き物たちにとっても居心地がいいはず。そんな場所に期間限定の大きな森が出来るなら…きっと絶好の隠れ家でしょう。これを大量に食べ、体の中で栄養になりそうなものだけを濾すことで「食事」として成立させているのではないかという説です。これなら口いっぱいに詰め込んだ海苔がそのまま出てきてしまっても問題なく。あくまで「海苔はお皿でしかない」という話なら納得がいきます。

詰め込めるだけ詰め込みました!みたいなお口

海苔パターン、攻略していきます

さて、海苔パターンとはなにか?を簡単に紹介しましたのでここからは実践編です。

海苔パターンを攻略する上で最も重要なのが“巻きスピード”と“カラーセレクト”。この二つをしっかり意識するだけでもかなりバイトを拾っていけるはずなので早速掘り下げていきましょう。まずは巻きスピードのお話。

ウルトラデッドスローから早巻きまでとことん試すべし!

海苔が流れるスピードって???これ、意外とむずかしい。“海中を漂う”ならゆっくり、それもほとんど動いていないようなゆっくり加減ですよね。“潮に流されている”ならもっと早そうです。それ自体が自力で泳いでいるわけではないので潮の加減でコロコロと変わります。

(数発のヒット映像ですが、全て巻きスピードが違います。もちろん同日です)

こういう時に一番やってはいけないのが、「今日はこのスピードで巻く!」と決めつけてしまうこと。常に状況を観察しながら、様々な巻きスピードを試してみてください。海苔=スローという決めつけもNG。かなりの早巻きで食ってくることも多々あるのが海苔パターンです。また近くで釣れている人がいたら積極的に真似させてもらいましょう。釣れている人の巻きスピードが“今”の正解です。

海苔パターン用のカラーセレクトを用意しよう

ここまで記事を読んでくれている方はもうお気づきでしょう。そう、海苔パターンはかなり特殊なパターンです。つまり、いつものカラーローテだと、完全ノーバイト‼という悲惨な事故に繋がります。と、いうわけで今回はタカシマムザホルモン流【絶対必要!失敗しない海苔パターン最強カラー秘伝の書】を“コッソリ”お見せしちゃいます。

はいこちら!

圧倒的にメインとなるのはブラック海藻グリーンゴールドディープグリーンゴールドと言った所謂「海苔カラー」達。これらを基準にしてよりアピールを強めたい時はリバーシブルブラックゴールドとなります。マズメ時や新たなポイントの1投目などはリバーシブルカラーから試してほしいところですね。

(例えばこの時は海苔ポイント到着一投目。最潮下でもリバーシブルブラックゴールドに食ってきました)

TierSで反応が無い場合は…。

・アピールが足りない?→リバーシブル濃いオレンジレッドや新オレンジ
・よりリアルな海苔を演出!→グレードットパープルやべっ甲

といった具合にローテーションしてみてください。特に僕が困った時頼るのは「べっ甲」。泳がせるとまさに色が薄い時の海苔そのもの。更に同時期に発生するアミパターンにもドンピシャのカラーなので冬場は絶対持っていてほしいカラーです。

困った時のべっ甲

それでもダメ!もはや海苔なのかアミなのか何喰ってるかわからない!!という“稀によくある”時はBドット濃いオレンジ、ゼブラレッドゴールドラメが火を噴く可能性が高いです。

これが不思議なことに、水温が底付近まで下がるとオレンジゼブラよりもレッドゼブラの方がよく食われるようになります。夏と冬では紫外線の波長が違うから水中での見え方が変わる?なんて言われますが…実際の所はどうなんでしょう。マダイの知り合いがいる方はなぜなのかぜひ聞いてみてください。

そして本当の本当に困った時何度も助けてくれたのがドット濃いオレンジ。これはすみません。どのメーカーのドットオレンジでもいいわけではなく、「鯛龍のドット濃いオレンジ」が明らかに強いタイミングがハッキリと存在します。ただこれを語り始めると凄まじい量の文章になるため割愛。現場で僕に会ったらこっそり聞いてください…。時合い以外でお願いします…。

鯛龍シリーズの一覧はこちらをご覧ください!

弱いバイトを弾かないフィネスなロッドを使う

おまけに…というにはあまりに重要なファクターなのですが…低水温期×動かないエサというマイナスコンボの影響で、海苔食いのマダイはめちゃくちゃ小さなバイトしか出さないのが常です。おまけに漂う海苔の端を噛んで少しずつ口に詰め込むような食べ方をしているので、ファーストバイトから針掛かりさせるまでがとにかく長い!もちろんこの間違和感を感じると簡単にネクタイを離してしまいます。

そんな状況ですから、ロッドには水中を感じる感度やマダイの口まで確実にフックを持っていけるフルソリッド特有の柔軟性が求められます。固いキンキンなロッドの方が感度がいい!と思われるかも知れませんが、固いロッドの感度は反響感度といって、音が出るアタリを増幅して手元に伝える事には長けますが「ほんのわずか穂先がもたれるだけのバイト」のような無音のアタリを拾うのは難しいのです。

(微かなバイトを本アタリに昇華できるロッド、使っていますか?)

僕の圧倒的オススメは「タイラバスティックR GTSR-FS54SUL」。極細で超繊細なブランクス×ショートレングスは、これでもかと水中の情報を教えてくれます。マダイがネクタイの先を噛んだ、まだ噛んでないが後ろについた、横からヘッド付近を狙って来たという情報が丸わかりという凄いロッドです。

もう少し長い方が使いやすい!ミヨシに乗ることが多い!という方には「タイラバスティックR GTSR-FS60SULをオススメします。

最後にお願い

海苔の養殖場である海苔棚はあくまでも漁師さん、養殖業者さんの「仕事場」であり「畑」です。

カブトムシの幼虫が捕れるからと言って他人様の畑に入り勝手に掘り起こしてはいけないのと同じで、その下に鯛がいるからと海苔棚の中に入っていくなんてことは絶対にNGです。事実、一部の心無い釣り人が海苔棚へ侵入し漁師さんに迷惑をかけたことが原因で、ルールを守っているほとんどの釣り人、船長達が海苔パターンを楽しめなくなるという話があります。

「釣りは環境あってこそ。そこに生きる人たちあってこそ。」です。ルールを厳守し、自分勝手な行動を取らぬよう、お願いします。

Galápagos(ガラパゴス)

バスフィッシング・ソルトルアーフィッシング、それぞれ異なるジャンルのエキスパート達が集まり2021年に設立。 代表作「Grace240F」を始め、現場で徹底的に研鑽を積んだ逸品が光る。
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