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今江克隆のルアーニュースクラブR「TOP50シリーズ閉幕〜年間ランキング26位の価値〜」 第1259回

連載:今江克隆のルアーニュースクラブR
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先週末開始されたTOP50最終戦霞ヶ浦全域戦を終え、2025年TOP50シリーズが閉幕した。

来季残留圏内である年間ボーダーライン31位(53人の60%、31人が来季クオリファイ圏内)で迎えた最終戦は14位入賞でフィニッシュ。

年間ランキングを26位に上げ、自力残留を決めた。

今江的に何気にカスミ最強のひとりと思っている今泉プロが決勝逆転勝利で初優勝を飾った。TOP50初優勝も意外だったが、ウィニングルアーは想像の斜め上をいっていた…。

年間ランキング26位の価値

年間26位などかつての自分であれば何の価値すら見いだせない順位だ。

だが、時代のゲームチェンジャーとなるライブソナーの出現で、TOP50の勢力図は劇的に変容し20代の若手が上位を独占する時代に変わった。

それでもライブソナー勢力に昭和世代の代表として挑むため、この2年は自分にとって自力で30位以内に残ることもら恐ろしく遠い目標にすら思えていた。

言い替えればライブを本気で練習し、実戦で試しながらのゲーム展開は自分の本来のスタイルが中途半端になってしまう過渡期とも言えた。

ゆえにこの年間成績26位は、自分にとって大げさではなくA.O.Yを賭けた戦いに匹敵する価値ある1年の結果だったと思う。

2025シーズンを振り返る

昨年、自分は41年のトップカテゴリープロ生活で初めて永久シード権を使用し、年間48位ながら恥を忍んでTOP50に残留した。

そして、もし「2年連続永久シード権行使」になったら、年初に引退宣言したうえで2026年をファイナルシーズンとして選手人生を終え、次の新たなステージに移る覚悟を決めていた。

本心は辞めたくはない。それゆえライブに必要なフィジカルトレーニング、5kmのジョギングを昨年シリーズ終了後から毎日続け、青野ダムでの特訓も続けて今年のシーズンを迎えた。

だが現実は甘くなかった。

得意だった野村ダムでの開幕戦でライブに挑戦しほぼ最下位予選落ち。

得意だった湖、開幕戦野村ダムでは河野正彦プロ、薮田和幸プロとそろってライブ勝負でほぼ最下位での予選落ち。冬の練習と毎日のトレーニングが無駄に思えた瞬間だった。

それでも負けてたまるかと挑んだ超苦手な第2戦小野湖で起死回生のビッグフィッシュを仕留め6位入賞。

開幕戦の大失態を帳消しにしたかと思えた第2戦小野湖決勝での2,300gオーバー。6位入賞でイーブン以上の結果に戻せたと思ったのだが…。

開幕戦の出遅れをチャラにしたかに思えたが、続く第3戦遠賀川では再び完全ノーフィッシュで最下位になり、年間は40位台まで落ちてしまった。正直、戦績の高い遠賀川での完全試合のショックは心を折るに十分なものだった。

もっとも得点を稼ぐ予定だった一番得意な第3戦遠賀川でまさかの2日連続ノーフィッシュ。年間は41位以下に急降下し正規残留が風前の灯に。

それでもまだ辞めたくないという気持ちは自分の想像以上に強いものだったのかもしれない。

絶対に落とせない第4戦桧原湖では、RSウィルスに感染してしまい38度越えの熱と激しい咳で苦しみ、初日33位に沈む。

その夜はまたしても心折れかけたが、2日目にスイムジグの岩盤立木ライブサイトがハマって大マクリに成功し22位予選通過、決勝で17位まで順位を上げ年間をボーダーラインの31位に戻した。

RSウィルスにかかり、高熱と咳で苦しみながらも死に物狂いで初日33位から17位に。年間31位となり一縷の望みを最終戦につなげた。だがその後の肉体的ダメージは想像以上だった。

そしてすべては昨年から3試合(オールスター含め)3戦連続予選落ち、ノーフィッシュに終わっている最終戦霞ヶ浦全域戦の結果次第となった。

まさにそれは自分にとって、過去のA.O.Y争いや優勝争いすら凌駕する、今まで感じたことのない引退の恐怖が生むとてつもない「負」の緊張だった。

最終戦霞ヶ浦全域戦で予選落ち(30位以下)すれば正規残留の年間31位以内の可能性は当然ゼロ。

予選を通過すれば31位を守れる可能性は他選手次第。

確実に自力残留を決めるには入賞圏内の15位以内が絶対条件となった。

必死のプリプラクティス

これ以上何もできないと思えるほど必死に練習した。

2週間に及ぶ霞水系全域で早朝から日没まで1日も休まずプリプラをこなした。

フィジカルトレーニングの貯金も尽き、61歳を超えた体は毎朝毎朝痛みで全身が悲鳴を上げていた。

ただ、天候に恵まれたため比較的穏やかだった霞ヶ浦でかなり強力なパターンをつかめていた。

今回のプリプラで狙っていたエリアは圧倒的にバスのサイズが良かった霞ヶ浦本湖古渡、大山、西ノ洲エリアだった。だがこのエリアは秋に多い北東の強風に極めて弱く、風向き次第のキッカーエリアでもあった。

それが「クジャラ」のモリケンリグ5gからのよりフィネスな応用技である「ダンベルクラブエラストマー」での水面提灯からの水面直下スロースイミングだった。

プリプラでは「ダンベルエラストマー」のフワフワスイミングと「インチヘアリーエラストマー」のウルトラライトテキサスのスイミングがメインになると思っていたが、台風余波の強風でかすみのようにパターンは消えていた。

そしてライブソナーを使った「ドノーシャッド」での霞ヶ浦の浚渫攻めにちょっと今までとは違った攻め方のヒントもつかむこともできていた。

昔から得意な浚渫だが、今回の浚渫攻めはライブで多魚種だらけの中からバスらしい映像を見つけては「ドノーシャッド」を通し、動きの反応を見てバスかいなかを判断し集中する釣り方だった。ほとんどがピックアップ寸前にバイトしてくる。

公式練習

そしていよいよ公式練習を迎えたが、千葉県沖を通過する台風の影響で公式練習は北東の風で大荒れの荒天となり水温もプリプラから一気に5度も下がり晩秋を思わせる寒さになった。

その影響で軽量の「ダンベルクラブエラストマー」は沈黙。

プリプラでは「クジャラ」をマイクロダウンサイズしたフワフワ水面粘り&吊るし系・「ダンベルクラブ」や「インチヘアリー」がきいていた。季節進行が一気に秋に進み水温が5度近く下がったことは誤算だった。

まだベストリグを模索中だが、「ダンベルクラブエラストマー」は間違いなく今後、「クジャラ」とならぶ最強のトーナメントウェポンになりそうだ。

とにかく1尾を確実に釣るために風に影響されにくい北利根エリアを中心に北浦水系を回り、秋に効果の高いリアクションテキサスにチェンジしたことでバスの反応は得ることができたが、1尾が果てしなく遠いことだけは間違いなかった。

今回のプリプラでは1匹の重要性が異常に高いことを認知していたため、もっとも苦手なドメジャーエリア、北利根攻略にかなりの時間を割いていた。

おそらく600g以上のナイスキーパー毎日1尾×2日間で予選は確実に突破できるほどの厳しさだった。

ちなみに昨年の最終戦北浦では、2日間で900g1尾で予選通過だったため、とにかく初日はカッコや見えを一切張らず、恥を忍んでもキーパー1尾を釣ることに徹することにした。

初日

自力残留ギリギリの年間31位(53名中、上位60%が残留資格を得る)で迎えた最終戦霞ケ浦全域戦。3日間、毎日ナイスキーパー1尾を釣れば上位は間違いなく、過去最悪のノーフィッシュ率が予想される残酷な試合となった。

だが、再び大荒れとなった初日、会場近くの北利根川を6割メインに、北浦八幡ワンドまでのエリアでフィネスに徹したが、果てしなくバイトは遠く、最後の最後まであがきにあがいたが無情のノーバイトノーフィッシュとなってしまった。

53人中バスを1尾でも手にできたのは約半数の28名。

ポイント制の予選では300g1尾28位でも22点が入るが、ノーフィッシュだと5点。

この時点で2日目よほどハイウェイトを釣らない限り予選落ちの可能性は限りなく現実味を帯びてきた。

だがそれ以上に、あれほどまで苦しい練習をし必死で集中し頑張りぬいてなお、ワンバイトもなく初日を終えてしまった情けなさに、このとき自分は完全に心が折れてしまった。

ノーフィッシュ申告をした後、JB副会長に来季で引退する意思を告げたが、その本気の表情に副会長すら返す言葉を失うほどだったと、あとで聞いた。

42年間の試合経験で初めて、その日は艇庫にボートを入れた後、一切タックルを触らず試合後のそのままの状態で艇庫を後にした。もうこのときの自分には明日を頑張れる気力はなかった。

バスフィッシングの女神は「もう年齢的にも次のステージに行きなさい」と示唆しているのだと思うしかなかった。

その夜は晩飯も食べることなく18時には気を失っていた。

そして運命の2日目。2時半に目が覚めたとき、窓から月を見ながら「今日で楽になれるかな」と妙にリラックスした気持ちの自分がいた。

予選初日を終えた深夜、これがガチのとプロとして見る最後の月かと思って写真に残した下弦の月。諦めの悪い自分がとうとう観念した瞬間だった。

2日目

2日目スタート直前、この日のみ不思議なことにあれほど強かった北東爆風がピタリと止んだ。

これなら公式練習から北東の爆風で入れなかった霞ヶ浦本湖浚渫に朝一ワンチャン賭けてみるかと一気に向かう。

無風状態の浚渫ではボラたちが盛んに暴れていたが、ライブソナーで見ながら狙いの岩に当てないよう、かすめるように「ドノーシャッド」を通していく。すると数投目、狙った岩からボラやナマズとは違った影が「ドノーシャッド」を追尾し始めた。

スピードを維持しながらバイトしてくれ!とみていると、船べり直前でシャッドの軌道が水面に向いた瞬間にバスの動きが一気に早まった。

「来るっ!」、「ドノーシャッド」が水面に出るか出ないかの瞬間、バスがモンドリを打つようにシャッドを襲った。一本掛かりが見えロッドとラインが一直線に伸びたが、グラスのおかげで初撃の突っ込みをいなせたことが大きかった。

ネットインした瞬間、フックが外れたが1kgは余裕でありそうな丸々と太った浚渫バスだった。

予選2日目朝一の無風のチャンスに浚渫で仕留めたキッカー。ライブで見ながら、ボートべり寸前の喰い上げギリギリバイトをプロトのグラスロッドで何とか掛けることができた。ネットイン即、ルアーが外れるほどのショートバイトだった。

起死回生、予選通過できるかもしれないと電撃のような感情が走った瞬間、一気に集中力が増していくのを感じた。

デザイン・狩野氏の名作中の名作と断言する「ドノーシャッド・ハイピッチ」。おそらく霞ヶ浦でもっとも釣れるシャッドの筆頭だと思う。同時にグラビアスKTFフィネスの逆風時の遠投トラブルレス性能は絶対に不可欠なパートナーである。

その後、同じようなバイトで1本をバラしてしまったが、早々に浚渫はラッキーフィッシュと切り捨て、初日に風下の爆風で攻められなかった北利根~浪逆浦のアシに狙いを絞った。

そこで「リトルトゥルーパー(リルスーパートゥルーパー2.5インチ)」のリアクションテキサスでまたしてもキロフィッシュを仕留め、さらに移動したアシで再び800gをキャッチすることに成功、ウェイトはまさかの3kg近くに達していた。

この後、2本掛けるも入れ替えには及ばなかったが、これで確実に予選は突破したという高揚感は優勝経験にすら匹敵するものがあった。

ウェイトは2,930g、結果的にこのウェイトは最終戦3日間トータルでのトップウェイトをマークすることになった。

予選は余裕で通過、なんと決勝順位は8位進出という想像もしていなかった奇跡が起こった。

絶望的ノーフィッシュノーバイトで迎えた予選2日目、5バイトで3フィッシュをキャッチし、2,930gの今大会トップウェイトをマーク。試合も年間も絶体絶命の窮地から一気に8位で奇跡の決勝進出となった。

それはまるで、自分の心に偽りなくトーナメントに本心で別れを告げた自分に、トーナメントの女神が「やっぱりまだ別れたくない」と焦って引き留めてくれたような感覚だった。

それとも今の自分はもう本当にすべて失うほどの恐怖を感じる絶対絶命の状況にならなければ、本来の力を出せない(出さない)のかもしれない。

最終戦初日、ノーフィッシュとなり今回ばかりは本心から来季をファイナルシーズンとし引退することを決意していた。しかし、霞ヶ浦の女神は本気で別れを告げたからこそ、本気で自分を引き止めてくれたのかもしれない。

決勝、そして…

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