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今江克隆のルアーニュースクラブR「完全なる惨敗……次なる目標と新たな決意〜TOP50霞ヶ浦戦レポート〜」の巻 第1115回

連載:今江克隆のルアーニュースクラブR
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全身全霊を賭けて逆転を狙ったTOP50第4戦霞ヶ浦本湖戦が終わった。

結果は、TOP50歴で初めて経験する「ダブルカブトムシ」……即ち、予選2日連続「00(ダブルノーフィッシュ)」という、試合にすらなっていない完全なる惨敗だった。

琵琶湖湖北に匹敵する霞ヶ浦本湖は、バスボートの真の性能がフルに発揮できる最高の場所だ出典:JB/NBC

敗因は……

今試合は、公式練習初日から予選初日に掛けて毎日予期せぬトラブルが次々と起こったが、サポートメーカー、サポートメカニック、そしてスタッフの連日の頑張りで、何とかことなきを得ていただけに、それに応えられなかった自分の責任の重さを今も痛感している。

2日間にわたってノーフィッシュとなった今試合の敗因があるとすれば、今試合に限ってはバスとの巡り合わせの不運が重なったとしか思えない結果だった。

表彰台上位陣の多くが、ほぼ自分が狙っていた同じ場所を時間差で回っており、自分が選んだエリアやスポットに間違いがあったわけではなかった。

表彰台で語られた釣り方、狙い場に関しても多少の誤差はあれど、それが00と表彰台の差になったとは思えないものだった。

ただ一ついえることは、連日風速8mを超える北東の風で大荒れとなった霞ヶ浦本湖で、表彰台、上位に入った多くの選手が3日間中1日はゼロ(ノーフィッシュ)を記録しているという事実だろう。

北東8mの大荒れの中、連日霞ヶ浦最遠の地・桜川河口周辺までロングドライブ。多くの上位入賞者のボートが次々と到着していた

優勝した小林プロも、3位の黒田プロも、5位の小森プロも3日中1日はゼロを記録している。

だが、同時に彼らは逆にトップウェイト級のウェイトを3日中1日は記録しているという事実がそこにある。

負け惜しみにしか過ぎないが、もし自分が3日中ビッグウェイトを初日か2日目にだせていれば、その後の結果は真逆になっていたかもしれない……ということだ。

表彰台5人中3人が3日間で1日はノーフィッシュを記録した霞ヶ浦水系戦。逆に4kgを超えるビッグウェイトを1回でもだせば、ほぼ上位入賞が確定する試合だった

ハイウェイトのための賭け

自分で分析できる自分の敗因は、第3戦の失地を回復し、最終戦に望みをつなぐために何としても優勝、もしくはそれに準ずる結果につながるハイウェイトを3日間で1度はだすため、霞ヶ浦本湖最遠の地での勝負に賭けたことだろう。

3日間で1度でもだせれば上位確実、だが連続2日ノーフィッシュを喫した自分に3日目はなかった。

今年は開幕戦、第2戦とトップウェイトに準ずるハイウェイトを出すことで、毎試合ノーフィッシュを喫しながら戦線上位に生き残れてきたが、薄氷を踏む想いでのキワドい賭けは、今年の霞ケ浦水系には通用しなかった。

荒れない会場近くの北利根川で地道な釣りに徹して毎日1尾を釣れば予選通過の確率は高かったが、それでは第3戦の失地回復はかなわない。

年頭、今年は優勝を最優先課題に勝負すると宣言した通り、この第4戦は今年の試合で最も勝負に徹したことだけが、自分の中で唯一納得できた結果だった。

いずれにせよ、この試合を守るつもりは最初からなかったので、この試合をもって事実上、自分の昨年以上の結果は完全に絶たれた。

狙いは……

参考までに、自分が狙っていたのはスタート地点からもっとも遠い、霞ヶ浦最北端、土浦の石積みで、ナイスキーパー狙いのネコリグ・スイミング、そこで2本取れたらキッカー狙いで西浦から真逆の最北端の東浦恋瀬川周辺までのアシに絡んだ一級ブッシュをノーシンカーワームのベイトフィネスでラン&ガンで狙い撃つプランだった。

強い水押しを発揮することで、スイミングネコリグでイージーにキーパー が獲れていた青木哲プロデザインの「リグラー」がキーパー獲りのメインだった

ブッシュでのノーシンカーは、並のスキッピング精度では到達できない複雑なブッシュの最奥の最奥まで滑り込ませ、そこからの返しのスイミングで追わせて釣るパターンだった。

練習序盤ではスキップしやすい「カバースキャット2.5インチ」をメインに釣っていたが、本番は「カバースキャット」と同等のスキップ力を持ち、そこから泳がせて表層で喰い上げさせられる「ジャバロンNEO97」のリップカット仕様を主戦力に据えていた。

今試合のメインとなるはずだった「ジャバロンネオ97」のリップカット。スキッピング力は「カバースキャット2.5インチ」に匹敵する。カット面をヒートナイフで滑らか にした「ジャバロンネオ97」は#1/0フックが使えるのが最大メリット

試合当日

試合本番は、連日、土浦、西浦が湖北なみの大荒れになる北東8m以上の風が朝から吹いたが、初めて経験する「レンジャー521Lフランケン/300racing」の本気の荒波走破能力は、予想をはるかに超えるもので、予定の場所にほぼ苦もなく到達することはできた。

2日目は大荒れの中、28番スタートながら先行する10艇以上を抜いて土浦石積一番乗りも果たせた。

結果的に場所もスポットも決して間違ってはいなかった。

だが、初日は4度のミスを犯し、2日目は神キャストを何度決めても1度のバイトすら起きることはなかった。

2日目はさらに大荒れの中、桜川から真逆の東浦最遠の果て、恋瀬川河口までをラン&ガンで走りまくった

何かが違ったのだとしたら、それは何としても勝ちたいという気負いが、自分のメンタルに微妙な歯車のズレを生じさせていたのだろう。

39年間もプロトーナメントを戦ってきたが、バスプロの真の強さを左右するものは間違いなくメンタル、落ち着いた「平常心こそが最強の技術」なのだと思う。

おそらく自分は、霞ヶ浦の荒波を恐れず走破し、目的地に到達した時点で「アドレナリン過剰」の興奮状態になっていたのだろう。

初めてその性能を120%発揮した「レンジャーZ521Lフランケン」。想像をはるかに超える荒波走破力を発揮した決して沈まない不沈構造バスボートだ出典:JB/NBC

次の目標

この完膚なきまでの敗戦で自分の2022年シリーズの目標だったAOY獲得、昨年度以上のランキング獲得の道は完全に絶たれた。

だが、今の心境はドン底の中にもどこか昨年よりスッキリとした気持ちがある。

今年は開幕前にブログで宣言した通り、全試合リスクを張っても「優勝」を最優先目標に自分本来のスタイルを意図的に押し通している結果なので、良くも悪くも両極端な結果になることは覚悟していた。

昨年は徹底してランキング上位復活を目標に、ガマンにガマンを重ねたシーズンだった。

そして沢村幸弘プロに次ぐ最上位ランキング3位(59歳)の目標を達したことで、今度は自分の「最大出力」がどの程度残っているのかを意図的に試しているところがある。

39年来の永遠のライバル、沢村プロが持つ最高齢優勝(59歳・遠賀川戦)に並ぶこと、そしてTOP50最多勝の維持と追加が次の最大目標でもあるからだ。

守らない、引退もしない

この第4戦のダブルカブトムシで、年間ランキングは危険水域の35位まで落ちてしまった。

だが2018年に初めて30位となり残留権を失いかけた時、その情けなさから永年シード権を使わず引退を本気で考えた時のような迷いはない(結局、2018年は繰り上げ28位残留)。

万が一、初の永年シード権を使うことになっても、最終戦・桧原湖も守る気持ちは微塵もないし、まだまだ引退する気持ちもない。

自分の最後の引き際は自分で決める。

それがJB創設時からJBトーナメントに人生を賭けてきた、唯一のJB永年シード獲得プロトーナメンター・今江克隆としての誇りと覚悟である。